天然資源が豊富なアゼルバイジャンは、欧州のエネルギー需要を満たすことができる。同国は新興の中堅国であり、イスラム圏でありながら世俗主義を掲げ、豊富な天然資源を有し、地理的にも欧州と中央アジアの間に位置している。同国は欧州への天然ガス輸出に前向きであり、イラン、ロシア、中国に対しては懐疑的な姿勢を取っている。さらに、自国のエネルギー施設がロシアや中国に従属する事態を避けたいという意向も持っている。多少の相違点があったとしても、EUは完璧を追求するあまり、良い話を逃すような過ちを犯すべきではない。
勝利を目前にしての敗北
欧州が直面するエネルギー問題は、資金調達や実行、継続の失敗という側面が強まっている。ロシアへの依存を減らし、米国産LNGを大量に確保したにもかかわらず、欧州は供給元の多角化に向けたその他の合意を実際の供給へと結び付けることに苦戦している。本稿で取り上げた3つの選択肢が示す通り、欧州には打つ手がないわけではない。また、欧州は決してなすがままになっているわけでもない。むしろ、欧州はまたしても、自らのエネルギー安全保障に必要な投資を行うことに失敗したのだ。
EUには「こうあってほしい」という単なる願望ではなく、自らが直面する現実に即したエネルギー政策が必要だ。再生可能エネルギーへの移行には長い年月を要する。その間にも、特に人工知能(AI)分野の急速な発展に伴い、欧州では電力需要が伸び続けるだろう。先進的なエネルギー技術を制限し、ロシアからの輸入を排除し、米国産LNGへの依存度を高めていくことは、地政学的な情勢が再び変化したり、再生可能エネルギーの普及が目標に達しなかったりした場合、失敗の余地をほとんど残さないことになる。
EUのエネルギー政策の不備は一朝一夕には解決できないが、既に締結した合意を速やかに履行し、重要な社会基盤に資金を投じることはできる。欧州は長年にわたり、ロシア産天然ガスへの過度な依存がもたらす危険性から目を背け、耳をふさいできた。今後のエネルギー戦略では、特定の供給国が再びロシアと同じような強い影響力を握ることがないようにすべきだ。そのためには、過去に幾度となく経験したような深刻なエネルギー不足に陥ってから対応するのではなく、次の危機が訪れる前にあらかじめ余裕を確保しておく必要がある。


