欧州

2026.09.09 09:00

ロシア依存からの脱却を図る欧州、エネルギー供給元を多角化するには

天然ガスパイプライン「アドリア横断パイプライン(TAP)」の支線「ギリシャ・ブルガリア相互接続パイプライン(IGB)」。2022年7月30日撮影(Nicolas Economou/NurPhoto via Getty Images)

第1の選択肢 中東

最も有力な代替案として浮上しているのは、中東産のLNGだ。世界有数のLNG供給国であるカタールは、膨大な天然ガス埋蔵量を誇る。他方で、中東は欧州にとって、供給元の多角化によって低減すべき「特定地域への集中リスク」をはらんでいる。

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問題は地理的な要因にある。同地域のエネルギー施設の多くは、イラン、イスラエル、トルコ、ペルシャ湾岸諸国、そして米国が関与する紛争の影響が及ぶ範囲内に位置している。イランは3月、世界最大のLNG生産・輸出拠点のあるカタール北部の工業都市ラスラファンに対してミサイル攻撃を行い、同国のLNG輸出は大きな打撃を受けた。国営カタール・エナジーは、損傷したLNG施設の修復には3~5年を要するとの見通しを示し、契約を結んでいる販売先への供給義務を免れる「不可抗力」を宣言した。

単に供給元を多角化することが、エネルギーシステムの多様化につながるとは限らない。供給の大半が単一の海上輸送路に依存している場合、紛争によって、その経路が一斉に遮断される恐れがある。さらに、中国の影響力拡大が政治的リスクを増大させている。同国は中東のエネルギー経済に深く関与しており、イランと湾岸諸国の双方と関係を維持している。欧州は今後も中東からのエネルギー輸入を継続すべきだが、同地域を多角化戦略の基盤と見なすべきではない。米国、欧州、中国は、中東のエネルギー資源に過度に依存することの危険性を痛感してきた。

第2の選択肢 アフリカ

現在建設が計画されている「サハラ縦断ガスパイプライン」は、ナイジェリアの膨大な天然ガス資源をニジェール経由でアルジェリアに送り、欧州の既存の北アフリカパイプライン網へとつなぐものだ。全長4128キロに及ぶサハラ縦断ガスパイプラインは、年間最大300億立方メートルの天然ガスを輸送できるように設計されているが、完成には数年を要し、ナイジェリア、ニジェール、アルジェリア、そして欧州からの政治的関与が不可欠となる。建設には100億〜130億ドル(約1兆5000億~2兆円)という巨額の資金が必要となる。同パイプラインは度重なる遅延を経て、6月に建設が再開された。

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これはまさに、欧州が追求すべき社会基盤だ。完成すれば、欧州が遠く離れたLNGの海上輸送路に依存することなく、新たな天然ガス供給国との結び付きを確保できるだけでなく、アフリカとの経済関係も深まるだろう。しかし残念なことに、過去の遅延により、欧州のエネルギー政策と投資政策の失敗が露呈した。

周辺地域には深刻な政治的リスクも存在する。ニジェールの政情は不安定で、同パイプラインは政府が統制を維持するのに苦慮している地域を通ることになる。同国で8月に発生したクーデター未遂事件は、ロシアが阻止したと主張しているが、同地域の政治的リスクが投資家にとって単なる抽象的な懸念事項ではないことを改めて思い知らせることとなった。

同パイプラインの建設計画は、北アフリカの複雑な政治情勢にもさらされている。アルジェリアとモロッコは西サハラの領有権を巡って長年対立しており、両国の外交紛争は地域のエネルギー関係にも繰り返し影響を与えてきた。天然ガス供給を巡って改善しつつあるスペインとアルジェリアの関係の変化は、エネルギー問題がいかに容易に政治情勢と絡み合うかを示している。スペインのペドロ・サンチェス首相は7月20日、アルジェリアを公式訪問し、両国の関係強化を宣言したが、アルジェリアの宿敵であるモロッコはこの訪問への報復として、北アフリカに位置するスペインの飛び地セウタに不法移民を送り込んだ可能性が高い。

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翻訳・編集=安藤清香

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