
新しい料理を考えるときは、まずは古典に立ち返り、そこから紐解いていく。またある時は、器を前においてじっと対峙し、アイデアが下りてくるのを待つこともあるそうだ。器が好きで、古い時代のものから現代作家のものまで、宝物のように大切にする。器の力も借りて生まれた新作料理はどれも、カウンター割烹にふさわしいけれんみのないスタイルに行きついている。
昨年9月、ミシュランガイド東京2026の発表の日、これまでは足を運ぶことのなかった会場へ出向いた。そうしたら、思いもかけず、二つ星で名前をよばれた(ミシュランのシステムは招待状はくるが、星がいくつかは書かれていない、ゆえに会場で初めてわかる仕組みになっている)。
「あれは料理人になってから一番嬉しかったことでした。体がふるえましたもん。会場の外に出てから、恥ずかしながら泣きました。今までの努力が報われたという思いがこみ上げてきて。でもまだまだです。43歳ですし、自分にもチームにもまだ伸びしろがあると思っています。いや、あるはずです。いつの日か三つという星をとるために、今は努力していくしかありません」


