マネー

2015.12.08

中国のシルクロード政策は近隣諸国でどのように展開しているか

chungking / shutterstock

中国の一帯一路政策に関しては多くが書かれているが、政策そのものは、中国と近隣諸国の商業的、政治的関係を導くミッション・ステートメントに過ぎない。肝心なのは、当該地域で実際に何が起きているかだ。

この政策はまた、違いを鮮明に浮かび上がらせる。この12カ月、私はカザフスタン、パキスタン、アラブ首長国連邦及びその他のアジア諸国を訪ねて、地元実業家や中国人企業経営者に会い、一帯一路政策が商業活動にどのようなインパクトを与えているか訊いてみた。彼らの説明はさまざまで、国によって政策の影響が大きく異なっているのは明らかだった。

一帯一路政策の複雑さを体現しているのは、カザフスタンの状況だ。中国の隣国であるカザフスタンは、いわゆる「帯」の一部で、この政策のインパクトを最初に感じるべき国家だ。カザフスタンで活動する中国人フィクサーは、この半年間で、30ほどの中国の市や省の代表団を受け入れたと語っている。

ところが、私は最近カザフスタンに1週間滞在したが、その間、一帯一路政策のインパクトの弱さに落胆せずにいられなかった。長期的な変化が、まだ見えていないにしても、だ。

中国人労働者がシルクロードに溢れることを期待するな

一帯一路政策によって、一般には、中国商人がシルクロードの市場に溢れるだろうと予想されており、私もこの地域のおもな中国人コミュニティをいくつか訪ねてみた。ドバイの中国人人口が12万人にも上ることを考えてみてほしい。だが、カザフスタンでは、そういった状況は見られなかった。アルマトイの市場を何日も歩き回ったが、数人の中国商人を見つけるのがやっとだった。彼らによると、労働ビザを手に入れるのが難しいのだという。事実、多くは学生ビザで滞在し、学校よりも市場で長い時間を過ごしている。

このことは、一帯一路政策が「地上軍」のように展開するわけではないことを浮き彫りにしているという意味で、重要である。一帯一路政策が真に商業的意味を持つためには、中国企業はサプライチェーンと労働力をそっくり持ち込むのではなく、もっと地元のパートナーと仕事をすることになるだろう。

誰もが一帯一路政策に興奮しているわけではない

東アジアで暮らす我々は、中国で起きる出来事に注意を奪われがちだ。とりわけ、一帯一路政策のような大きな政策の転換が起きると、世界の他の地域も同じように注目していると考えがちである。しかし、現実には、中国の新戦略を聞いたことがないという地域は、世界に数多い。

この点でも、カザフスタンが良い例だ。カザフスタン政府は、中国の商業的関与を非常に重視している。しかし、私の経験では、重役クラスのビジネスマンで、この政策を知っている者や、この政策がカザフスタンにどれほどの利益をもたらすかを理解している者は、数少ない。

批判しているわけではない。これはたんに、ビジネス界は一般に、ロシアやヨーロッパの政策により注意を向けているという事実の反映に過ぎないのだ。石油価格の低迷によって、カザフスタンが、経済成長を遂げるための別の方法を模索せざるを得なくなったら、状況は変わるかもしれないが、現在のところ、一帯一路政策の重要性は低い。

それでも一帯一路政策はカザフスタンに益する

一帯一路政策に対する見方を変えられるものは、何だろうか? それは、中国がカザフスタンのインフラストラクチャーに投資することだ。私が話を聞いたカザフスタンのビジネスマンらは、鉄道への投資は言うに及ばず、大都市周辺の道路網への投資が不可欠だと、頻繁に口にした。

これは、中国が主導するアジアインフラ投資銀行にとって、願ってもないチャンスとなる。アジアインフラ投資銀行は、資金を提供すべきプロジェクトを探し回っているのだから。国内及び世界中の新興市場で道路建設にその手腕を発揮してきた中国企業にとっても、理想的なチャンスになるはずだ。

ただし、注意すべき点が一つある。カザフスタンの人口はわずか1700万人で、中国の大都市一つ程度の規模でしかない。30もの市や省の代表団すべてに行き渡るほどのビジネスチャンスが、そもそも存在していないのである。がっかりしながらカザフスタンを去ることになる者もいるだろう。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

ForbesBrandVoice

人気記事