Forbes JAPANは今年、J-CATを共催に迎え、新たなアワード「Destinations of the Year」を創設。工芸、食、自然、風習——各地で新たな観光価値を創造する30の事業者を選出、審査項目に沿って、特に象徴的な5つの取り組みを賞としてピックアップした。
工芸、食、自然、風習──地域の価値を掘り起こし、磨き上げ、ときに新しい要素もいれながら……。ユニークな体験を生み出し、自らを“デスティネーション(目的地)”としている事業者たちを紹介する。
蔵サウナと文化財の宿 森長|秋田県・男鹿
なまはげ文化を継ぐ宿で蔵サウナと発酵食、街歩き

文化財に泊まり、男鹿を暮らすように旅をする滞在がコンセプト。港町で長く親しまれた旅館を受け継ぎ、築約100年の登録有形文化財を現代の感性で再生。ゲストに対して、蔵を活用した「なもみサウナ」や秋田の食・酒を楽しみながら、この土地の日常や人との出会いに触れることができる滞在を提案している。文化財と地域文化を未来へつなぐ新しい旅の拠点として、伝統文化を現代のかたちに翻訳する、男鹿ならではの豊かな時間を育む町宿だ。
オーベルジュほまち 三國湊|福井県・三国
千年の湊町「三國湊」で吉野建の美食

北前船の寄港地として栄えたいにしえの湊町、三國湊。町全体をホテルと見立て、点在する町家10棟を往時の柱・梁(はり)・笏谷石(しゃくだにいし)を生かしてリノベーションしたのがオーベルジュほまち 三國湊だ。ゆったりとした時間をぜいたくに過ごせる。食ではフレンチのスターシェフ吉野建が皇室献上がに「越前がに」や希少な最高級和牛「若狭牛」等、世界に誇る食材を独自の世界観でメニュー化。町に残る史跡や行事、人との触れ合いから、深い歴史の息吹を感じることができる。
THREE GOATS|岩手県・盛岡
再生する人々と自然の優しさにふれる、7日間の潮風トレイル

八戸から相馬まで約1000km続くロングトレイルを、7日間のハイライトで歩く。道中は地元の住民と交流、震災からの再生の軌跡とこの土地に生き続ける理由を聞き、自身の暮らしと命を見つめ直す。同行するガイドは、東北を愛する盛岡在住20年の英語ネイティブ。インバウンドの少ない東北で、災害と隣り合わせの日常の暮らしにふれられる体験が唯一無二。快適に歩く旅をサポートするためのお弁当や荷物運搬などのニーズも増えた。
Takigahara Craft & Stay|石川県・小松
小松の日本遺産・石文化の体験で綴る“自然と共存する美学”

かつて採石と農業で成り立った石川・小松の滝ヶ原。人口170人ほどの限界集落に立つ一棟貸しの宿は、築80年の石蔵を改装したもの。ラウンジにはザハ・ハディッドやジャスパー・モリソンの家具が置かれ、敷地の農園で野菜や卵を自給する。地域住民による採石場ガイドや那谷寺と連携した石文化体験で地域にも報酬金額を還元。地域で得られた利益は、古民家・石蔵の維持修繕、耕作放棄地の再生、里山の景観保全へと再投資している。
Craft Invitation by SOE|福井県・越前鯖江
1500年の伝統が息づく越前鯖江で、産業観光の最前線を知る

原点は、地域の工房を一般公開し、つくり手と直接出会えるオープンファクトリーイベント「RENEW」。約120社が参加し、3日間で延べ5.5万人を集める催しを通年で受け止める催し。2025年“産地に泊まる”をコンセプトに宿をオープン。豪商の古民家と蔵を改装、全3室に楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)という和紙の原料植物の名を冠す。越前鯖江には7つの地場産業が集積。地域産業を100年後も継続させるための手段として観光を位置づけ、職人の声を聞き、訪日外国人の誘客に取り組む。



