2026.09.17 13:30

各地で新たな観光価値を創造する先駆者たち

Destinations of the Year 2026(イラスト=Klawe Rzeczy)

鍋島オーベルジュ|佐賀県・肥前浜宿

日本初の酒蔵オーベルジュ、「鍋島」の酒づくりと美食

富久千代酒造が2021年に開いた、日本初の蔵元が営むオーベルジュ。隈研吾建築都市設計事務所をはじめとする建築家が、歴史的建築を生かした個性豊かな空間を手がける。宿泊棟は4棟で、分散型ホテルにより地域回遊を促し、地域景観の保全、地域の雇用創出を実現している。料理を手がけるのは、神楽坂 石かわで研さんを積んだ西村卓馬。宿泊者には通常非公開の酒蔵見学と、一般には流通しない希少な「鍋島」の試飲を提供。

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Craft Inn 手[té]|福岡県・八女

手仕事に囲まれ、手仕事を習う八女の暮らしの宿

福岡・八女の古民家を生かした1棟2室の宿。名の「手」には、手仕事に触れる場所という思いを込める。城下町から商家の町になった八女に残る、暮らし使われてきた「生活工芸」をハイライト。泊まり客の7割程度が海外から。竹細工のテーブル、提灯の明かり、久留米絣の座布団を、商品でなく日々の道具として使うことで、現代型に再編集された九州の手仕事を体感する宿だ。伝統工芸のつくり手や茶農家を尋ねるツアーやガイド付きの街歩きも用意している。

和多屋別荘|佐賀県・嬉野温泉

嬉野温泉、茶、肥前吉田焼の文化を巡るティーツーリズム

佐賀・嬉野温泉で、宿泊以外の事業を敷地に取り込んだ旅館。館内には、嬉野で事業を営むことを条件にした起業家の入居施設があり、日本語学校も併設する。中心にあるのは嬉野茶のティーツーリズムだ。かつて旅館が無料で出していた一杯を、2017年から「旅の目的」へ組み直した。茶畑のなかに「天茶台」「茶塔」といった茶空間を設け、山並みや大村湾を望みながら、その茶葉を育てた茶農家自身が入れる一杯を味わう。

Enowa Yufuin|大分県・湯布院

食と農への好奇心を満たすファームドリブン・オーベルジュ

2023年に大分・由布院で開業した、「FARM DRIVEN」をコアコンセプトに掲げるオーベルジュ。ニューヨークの「ブルーヒル」でスーシェフを務めたタシ・ジャムツォ氏をエグゼクティブシェフに迎え、自社ファームでその日に収穫した野菜やハーブを料理へとつなぎ、土地の循環を一皿で表現する。農福連携の新たなモデルづくりにも取り組み、地域課題を価値へと転換しながら、持続可能な農業と雇用の未来を追求している。

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冨士屋ホテル|大分県・鉄輪温泉

文化財の旅館建築と、温泉ミネラルをまとう味噌づくり体験

 大分・鉄輪温泉に唯一残る明治建築の文化財「旧冨士屋旅館」。1899年創業以来の伝統と文化を今につなぐホテルだ。竹工芸や「地獄蒸し」などの体験を多数実施し、宿泊を超えて地域文化を体現する。なかでも100℃の天然蒸気で6時間蒸した大豆でつくる味噌づくりが面白い。温泉のミネラルをまとった減塩味噌を求め3日間で100人以上が集う。4代目が主導する地域イベント「かんなわ蒸し通りずむ」は10年目を迎え、鉄輪の「湯治文化」の未来を照らす。

【特集】Destinations of the Year2026

数や低価格を競う"消費される観光"から、地域固有の体験を軸に、経済と文化が"循環する観光"へ。観光産業の「質的転換」が求められる今、「体験がデスティネーションになる」という考え方が鍵となる。

Forbes JAPANは今年、J-CATを共催に迎え、新たなアワード「Destinations of the Year」を創設。工芸、食、自然、風習——各地で新たな観光価値を創造する30の事業者を選出、審査項目に沿って、特に象徴的な5つの取り組みを賞としてピックアップした。

文=青山 鼓 編集=鈴木奈央

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