ルーシー(古人類学では標本番号 AL 288-1と呼ばれている)は、アウストラロピテクス・アファレンシスという種に属する女性1個体の骨格の、約40パーセントから成る。古人類学者であるドナルド・ジョハンソン率いるチームによって、1974年にエチオピアで発見された。ルーシーというニックネームは、当時流れていたビートルズの曲、『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』にちなんだものと伝えられている。
ルーシーは身長3フィート半(1.06メートル)で、体重は65ポンド(29キロ)ほど。メスのチンパンジーとさほど変わらない体格だ。小さな脳も現代のチンパンジーに近いサイズだが、骨盤と脚は小さいとは言え、形は明らかに人類のものと似ており、腰椎が湾曲しているなど、二足歩行の特徴をすべて備えている。1974年当時、ルーシーは、私達の祖先が大きな脳を発達させる前にすでに2本の足で歩いていたことをたしかに示す、最も古い証拠だった。
アウストラロピテクス・アファレンシスの化石は、ルーシーだけではない。他にもよく知られた個体が残っており、それらはいずれも、二足歩行の骨格の見事なモザイク進化を示している。
1976年、メアリー・リーキーがタンザニアのラエトリで足跡を ― 火山灰の上を歩いた二足歩行の猿人の化石化した足跡を ― 発見した。その化石化した足跡は、親指と他の足指の先が直線上に並んでおり、はっきりとした土踏まずが存在する等、現代の二足歩行の特徴を数多く備えている。370万年前の足跡と見られており、ルーシーよりもさらに時代が遡る。
ドナルド・ジョハンソンが率いるチームは、1975年には「最初の家族」(AL333)も発見した。これは約250の骨から成り、アウストラロピテクス・アファレンシスに属する13個体のものだ。男女両方の骨があり、死亡当時の個体年齢もさまざまだったことから、なんらかの災害によって同時期に死亡したのではないかと考えられている。
その後、セラム(DIK-1/1)と呼ばれるアウストラロピテクス・アファレンシスの化石が、2000年に古人類学者、ゼレゼネイ・アレムゼゲドによって発見された。これは3歳児の骨で、ルーシーが発見された場所からそれほど遠くない場所で見つかったことから、「ルーシーの赤ちゃん」と呼ばれているが、セラムはルーシーを12万年遡る。猿人の子供の化石は個体発生、すなわち、古い種の成長と発達について多くを教えてくれるため、ことさら興味深い。
ほぼ完璧な形で残されているセラムの下肢の骨は二足歩行を示唆しているが、この子供の肩や手の骨はより類人猿に近く、木からたやすくぶら下がることができたと思われる。この子供が女の子だと研究者が判断したのは、犬歯が小さいためである。男性の犬歯はもっと大きい。
ダウンロードして家庭の3Dプリンターで復元できるアウストラロピテクス・アファレンシスのデータは、残念ながら数少ないが、Bone Clonesのような企業を通してレプリカを手に入れることはできる。もっとも、「最初の家族」の破片から作った頭蓋骨、標本番号EA-DCC-01のデータは、デューク大学進化人類学部の尽力によって、MorphoSourceから入手可能となっている。
このように、11月24日のグーグル・ドゥードゥルは、人類の進化の研究におけるこの40年の画期的発見を祝っているのである。しかも、女性のアウストラピテクスに(ひいては同じ種の女の子にも)光を当てたことにより、グーグルは、進化を図示する際に男性を使うという、長年続いてきた性差別の悪しき伝統を打ち破った。人類の進化を表す図に女性と子供を加えることは、私達の過去に対する理解に変革をもたらした。