リーダーシップ

2026.09.08 09:46

AI投資の成果創出にリーダーシップの「影響力」が不可欠な理由

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企業は人工知能(AI)や自動化、アナリティクスに巨額の投資を行っている。しかし、導入が広く進んでいるにもかかわらず、企業レベルでの広範なインパクトにはつながっていない。なぜなのだろうか。

マッキンゼーの『2026年AIの現状』調査によると、回答者の10人中9人近くが、少なくとも1つの事業部門で定期的にAIを使用していると答えている。しかし、AIの利用が自社の利払い前・税引き前利益(EBIT)にプラスの影響を与えているとした回答者はわずか37%にとどまり、AIで高い成果を上げている「ハイパフォーマー」に分類されたのはわずか6%だった。

AI導入と組織的インパクトのあいだにある隔たりは、単なる技術や実装の問題ではない。リーダーシップの影響力の問題でもある。

私はコンサルティングの現場で、自組織のAI投資の恩恵を実現する責任を問われながらも、技術や導入のスケジュール、あるいはチームに影響を与える決定を直接コントロールできないリーダーを何度も目にしてきた。彼らは「権限なき責任」という課題に直面している。つまり、成功を左右する多くの要因をコントロールできないまま、成果に対する責任だけを負わされているのだ。

企業全体のテクノロジーリーダーによって選定されたAIプラットフォームを導入しなければならない、ある部門のリーダーを例に考えてみよう。そのリーダーは、ツールを選んだわけでも、スケジュールを設定したわけでも、ワークフローの変更方法を決定したわけでもない。それにもかかわらず、従業員が導入に抵抗したり、顧客サービスが低下したり、期待されていた生産性の向上が実現しなかったりした場合、その責任を問われるのはこのリーダーなのだ。

AI導入と組織的インパクトの隔たりを埋めるには、意思決定を伝達し、実装計画を管理するだけでは不十分である。変化を形づくる人々と、その変化を受け入れるよう求められる人々の双方に影響を及ぼせるリーダーが必要だ。

この能力の重要性は、世界経済フォーラムの『仕事の未来レポート2025にも反映されており、雇用主が最も不可欠とみなすコアスキルの1つとして、リーダーシップと社会的影響力が挙げられている。

AI主導の変革において、あらゆるレベルで影響力が必要とされる理由

リーダーシップの影響力とは、信頼を勝ち取り、人々や状況が何を求めているかを理解し、対立する懸念を抱えるステークホルダーを共通の行動へと動かす能力のことだ。

AI主導の変革において、リーダーは意図した成果を達成するために、上層部や組織の境界を越えて横方向へと影響力を発揮しなければならない。また、人々が新しい働き方を受け入れるために必要な信頼、明確さ、当事者意識(オーナーシップ)を醸成することで、自身のチームにも影響を与える必要がある。

AI主導の変革を組織的な成果へと結びつけるために、リーダーは以下の3つの不可欠な影響力を発揮しなければならない。

  • 影響を及ぼす機会を生む信頼の土台を築く
  • 人と状況が求めるものに適応する
  • 信頼と勢いを損なわずに、重要度の高い対話を進める

1. 信頼の土台を築く

肩書は対話への入口を与えるかもしれない。しかし、他者がリーダーの判断を信頼するかどうかを決めるのは行動である。リーダーは、次の3つの基本的な規律を通じてその信頼を獲得する。

信頼性を確立する。専門知識や優れた実績は影響力への扉を開くかもしれないが、リーダーが信頼性を維持できるのは、質の高い仕事を提供し、約束を守り、健全な判断を下すことによってである。こうしたリーダーは、持ち合わせていない確実性があるふりをするのではなく、自分が知らないことを認める勇気と謙虚さを持っている。信頼構築の基本は、自分が言うと言ったことを実行することだ。

共通の土台を見いだし、共通の目標を築く。影響力は、他者にとって何が重要かを理解することから始まる。リーダーは「あなたにとっての成功とはどのようなものですか?」といった質問を投げかけ、相手が聞き届けられ、理解されたと感じるまで耳を傾ける。そして、対立する優先事項を共通の目的に結びつける機会を探し、ステークホルダーが個々の立場を守ることから、組織全体に利益をもたらす成果の追求へと移行できるよう支援する。

強固な職業上の関係を築く。AI主導の変革が単一のチームや部門内だけで完結することは極めてまれだ。リーダーは、テクノロジー、オペレーション、人事、法務、リスク管理など、組織の境界を越えて協働しなければならない。強固な職業上の関係があれば、正式な権限が限られている場合でも、情報の交換、懸念の表面化、意見の相違の解決、行動の調整が容易になる。

信頼が効果的な協働を保証するわけではないが、有意義な影響力を発揮することが可能になる条件を作り出す。

2. 人と状況が求めるものに適応する

AI主導の変革は、混乱、複雑さ、不確実性をもたらす。しかし、多くのAIイニシアチブが難航するのは、リーダーが行動を起こさないからではなく、状況や関与している人々を見誤るからだ。

変化への抵抗は、学習に対する消極性ではなく、雇用の安定に対する不安を反映しているのかもしれない。実行の遅れは、優先事項の競合、意思決定権限の曖昧さ、あるいはワークフローの再設計の不備に起因している可能性がある。実行の問題に見えるものは、往々にして診断(状況把握)の問題なのだ。

効果的なリーダーシップのアジリティは、状況認識から始まる。リーダーの対応の質は、その理解の質に依存するからだ。複雑なテクノロジーや実装上の課題に直面したとき、リーダーは次のように自問する。

  • 自分はどのような前提を置いているのか。
  • ほかにどのような可能性があり得るのか。
  • 関与するステークホルダーにとって最も重要なことは何か。
  • 彼らの視点から見れば、この状況はどのように合理的に説明できるか。

状況認識は、リーダーがステークホルダーの関心、組織の制約、対立する優先事項、リスク、感情的な力学を理解するのに役立つ。行動アジリティにより、リーダーはその理解を活かして、自身のコミュニケーション、意思決定、関わり方を適応させることができる。たとえば、導入スピードを重視するテクノロジー部門のリーダーに影響を与えるには、AIが自身の役割にどう影響するかを懸念している従業員に働きかけるのとは異なるアプローチが必要になるだろう。

状況認識を伴わない行動アジリティは、知恵を欠いた行動を生む。
行動アジリティを伴わない状況認識は、インパクトを欠いた洞察を生む。

これら2つの能力を合わせ持つために、リーダーは次の2つの不可欠な問いに答えなければならない。

この状況は、自分に何を求めているのか。
チームと組織にとって最善の成果をサポートするために、自分はどう適応すべきか。

日常的な意思決定やなじみのある状況において、広範な分析が必要になることはめったにない。しかし、意思決定の重要性、複雑さ、不確実性、感情的要因、ステークホルダーへの依存度、あるいは取り返しのつかなさが増すにつれ、リーダーは評価を深めなければならない。これにより、意思決定の質を高め、より強固な合意形成を図り、AI主導の変革を通じて人々により効果的な影響を与えることが可能になる。

3. 信頼と勢いを損なわずに、重要度の高い対話を進める

重要度の高い対話とは、見解が異なり、感情が高まり、結果が重要な意味を持つやり取りである。AI主導の変革では、リーダーが組織の境界や権限の階層を越えて、効果的に重要度の高い対話に臨むことが求められる。ステークホルダー間で、変革が必要であるという点では一致していても、スピード、リスク、能力、ガバナンス、および責任の所在については意見が分かれることがある。

チームにおいても、前提を問い直し、障害を表面化させ、責任を再定義し、どの慣行を変えるべきかを決めるために、同じように率直な対話が必要である。リーダーはリスクや提案について正しくても、タイミングの悪さ、厳しすぎる伝え方、好奇心の不足によって対話を誤ることがある。

効果的な協働には、「私」から「私たち」への根本的な転換が必要である。

  • 自分の立場を主張することから、本当の論点について足並みをそろえることへ。
  • 自分の視点に依存することから、より広い文脈を理解することへ。
  • 答えを提示することから、解決策を共創することへ。
  • 責任を割り当てることから、共有された当事者意識を確立することへ。

私は、組織のパートナーやチームとともにこうした転換を実践するための具体的な枠組みとして、「ACESモデル」を開発した。このモデルは、リーダーを対立する見解から、共通の理解、実行可能な解決策、そして共同のオーナーシップへと導くものである。

課題のすり合わせ(Align on the issue):解決策を議論する前に、真の機会、問題、または下すべき意思決定について明確にする。

文脈の把握(Contextual awareness):ステークホルダー、制約、リスク、およびそれがもたらす影響について、共通の理解を形成する。

解決策の模索(Explore solutions):テクノロジーの能力を、人間や組織のニーズと統合する可能性を共に創造する。

共同の行動(Shared action):明確な当事者意識、意思決定権限、次のステップ、および責任の所在を確立する。

各ステップは、その前のステップの上に成り立っている。リーダーは、組織の境界を越えてACESを活用することで、より優れた意思決定を形成し、チーム内では変革を明確な責任と連携された行動へと変換することができる。いずれの状況においても、このモデルは次の変革に必要な関係性を維持しながら、前進をサポートする。

リーダーシップの影響力がAI導入を成果に変える

AI主導の変革は、正式な権限が及ばなくなる組織の境界を越えて展開されることが増えている。テクノロジーの能力を組織的な成果へと変えるのは、リーダーシップの影響力にかかっている。

信頼が影響力を発揮する機会を生み出す。状況認識と行動アジリティによって、リーダーは状況が求めるものを理解し、自身のアプローチを適応させることができる。そしてACESが、その理解を共有された意思決定、連携された行動、そして次の変革を乗り越えられるほど強固な関係性へと変えるのだ。

リーダーは双方向に影響を与える必要がある。つまり、組織としてより良い意思決定を形成することと、自身のチームが混乱をより強力なパフォーマンスへと変えられるよう支援することだ。テクノロジーは変革の契機となるかもしれないが、人々がそれを「進歩」へと変えられるかどうかを決めるのは、リーダーシップの影響力なのである。

forbes.com 原文

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