人材育成(L&D)の世界において、「賛同を得ること(buy-in)」はおそらく最も誤解されている概念である。新規プログラムの立ち上げから、予算の確保、さらには現場のマネージャーに対してメンバーの公式な学習を支援することが不可欠だと説得する場面にいたるまで、数多くの会話でこの言葉が登場する。私たちは賛同を得ることを、あたかも業務に欠かせないプロセスであるかのように語る。しかし、決してそうではない。少なくとも、そうあるべきではない。
組織内政治の影響や権力が、L&Dの立ち位置とインパクトの可能性にどのように作用するのかを調べるなかで、私はこのことについて多く考えてきた。その過程で出会ったのが、ジェフリー・フェファーと彼の著書『権力:なぜ持つ人がいるのか、そして持たない人がいるのか』である。同書でスタンフォード大学教授のフェファーは、賛同を絶えず求め続ける状況の根底には、技術的専門性や善意だけでは真の影響力を獲得できないという事実があると論じている。権力は、リソースをコントロールし、組織が本当に重視する問題を解決する人々に流れる。そしてL&Dはしばしば、このレバレッジを欠いている。
L&Dが実質的なコミットメントを得るのに苦労する場面を見ていこう。
新規テクノロジーの予算確保
学習テクノロジーの予算について承認を求める際、L&Dのリーダーは「全員のための学習」の価値や、「将来に向けた人材の育成」(それが何であれ、いつであれ)の重要性をアピールしがちである。しかし、高額なプラットフォームへの賛同を求めることは、L&D部門が「管理コストの発生源(コストセンター)」であるというイメージを強めるだけに終わってしまう。
そうではなく、L&Dのリーダーは財務的な課題を解決するビジネスケース(事業計画)を提示すべきである。多くの組織では、いわゆる「シャドースペンド(闇の支出)」(さまざまな部門で個別に行われる、管理されていない単発の研修やチームビルディングへの支出)によって資金が流出している。したがって、予算の要望時には、テクノロジーの導入がシャドースペンドを一元化し、財務の「漏れ」に対処し、致命的なスキルギャップを解消するための解決策であることを強調できる。このように枠組みを再定義することで、L&Dの価値はより明確になり、組織との整合性を図ることで影響力を獲得できるようになる。L&D部門が単に研修カタログを売り込むだけでなく、P&L(損益)に関わる課題の解決に真剣に取り組むとき、初めて真のビジネス部門として認識されることを、筆者は経験から知っている。
現場マネージャーからのサポート
L&Dと現場のマネージャーとの間にある摩擦は、この職種において最も一般的な悩みのひとつである。マネージャーがメンバーを研修に参加させなかったり、公式な学習イベントのフォローをしなかったりすると、L&Dは決まって、さらなる賛同を求め、トップダウンの圧力を強め、学習の重要性を強調しようとする。
これは、ピーター・センゲの「システム思考」に関する著作を思い起こさせる。そこには、筆者がL&Dのキャリアの中で感じながらも、うまく言語化できなかったことが示されている。センゲは、根本原因に対処しないまま、問題に対して短期的な対症療法を適用するパターンを「負担の転嫁(shifting the burden)」と呼んでいる。L&Dが標準的なプログラムを設計し、その実務への適用をマネージャーに丸投げするとき、学習を実際のパフォーマンスに結びつけるという「負担」を、すでに手一杯で、それを実行するための教育的なノウハウも持たない人々に転嫁していることになる。
マネージャーの動機は、目標の達成を最優先することにある。研修が彼らの業務を楽にしないのであれば、優先順位は下げられる。そのため、L&Dのリーダーは、「このマネージャーが解決を必要としている具体的なパフォーマンス上の課題は何か」と自問する必要がある。
専門家(SME)とのコラボレーション
L&Dの担当者に、社内の専門家(SME:Subject Matter Expert)との協働について尋ねれば、誰もがよくある話を口にするだろう。最初は合意し、最初の1、2回のミーティングは前向きに進むものの、次第にメールの返信が途絶え、期限が守られなくなっていく。そしてSMEは、忙しくなり他の優先事項ができたと言い訳するのだ。
この問題が解消されないのは、この関係における価値のやり取りが、ほぼ一方通行だからである。高いスキルを持ち、収益を生み出している人物に対して、見返りが明らかでないプロジェクトのために通常業務の手を止めてコンテンツを作成するよう依頼しても、そこには実質的な相互報酬が存在しない。そのため、プロジェクトから離脱したとしても、彼らにとって実質的な不利益は何もないのだ。
解決策は、プロジェクト管理を改善することではない。L&Dのリーダーは、SMEに協力を求める業務が、彼らがすでに解決しようとしているビジネス上の課題に直接結びついているようにする必要がある。SMEがプロジェクトと自身の目標との間に直接的なつながりを見いだした瞬間、彼らの関わり方は完全に変わる。コラボレーションは「親切での手伝い」ではなく、「自らの利益」となるのだ。
経営陣のスポンサーシップ
L&Dは、プログラムに信頼性を与え、政治的な後ろ盾となってくれる、組織内で十分な影響力を持つシニアスポンサーを見つけることに多くのエネルギーを割いている。しかし、役員からの支援が生ぬるいものであれば、エンゲージメント、プログラム全体の成功、そして投資そのものが危機に瀕することになる。
人は自然と、勢いがあり、自身の戦略的課題に資する取り組みに、自分の政治的資本を振り向ける。リーダーシッププログラムが上層部で支持を得られていないなら、最もあり得る説明は、それが経営層が実際に懸念していることに対処していないということだ。
筆者もかつて、プログラムの枠組みを再定義し、アプローチを「リーダーの育成」から「役員が懸念している具体的な能力ギャップ」へとシフトさせなければならなかったことがある。会話が「私たちのプログラム」ではなく「彼らの課題」になった瞬間、その場の熱量が一変した。
真のスポンサーシップは、L&Dが重要な能力ギャップをいかにして埋めるかを示すことによって得られる。データを用いて信頼できる根拠が示されれば、経営陣は自ら関与したいと考えるようになる。
状況を実際に変えるもの
もはや賛同を求める必要のないL&D部門には、共通の特徴がある。それは、ビジネスが直面している課題を一貫して解決していることだ。フェファーと同様に、筆者も、真の影響力は単に正しいアイデアや善意を持つことではなく、戦略的な位置づけとリソースのコントロールによって獲得されるものだと信じている。L&Dがビジネス上の課題からスタートし、測定可能な成果によって信頼を築くとき、賛同をめぐる議論は不要になる。
賛同をめぐる問題は、L&Dがその求め方に習熟したからといって解決するわけではない。L&Dが組織にとって、無視できないほど価値のある存在になるからこそ、解決するのだ。



