請求額が現実的なものに
アンソロピックは2026年4月に法人顧客の料金プランを定額制から実際のコンピューティング使用量に応じた従量課金制へと移行させた。その数週間後、GitHub(ギットハブ)もCopilot(コパイロット)について同様の変更を行った。同社は長年にわたり、サブスクリプション料金の最大8倍に相当するヘビーユーザーの費用を黙って負担していた。実際のインフラコストを反映する価格設定が正常化すれば、企業のAI関連請求額は現在の水準からさらに30~50%上昇するとアナリストは予測している。
収益性を確保するには価格を引き上げるか、消費量の伸びを上回るペースでコンピューティングやエネルギーのコストを引き下げる必要がある。そのどちらも起きていない。OpenAIの予測では、今年の損失は140億ドル(約2兆1800億円)で、2029年に初めて黒字に転換するまでの累積損失は440億ドル(約6兆8600億円)に達する見通しだ。投資家レイ・ダリオは現在の状況をバブルの初期段階と表現している。1990年代後半との類似点は示唆に富んでいる。インターネットは確かなテクノロジーだった。それでもバブル崩壊は起きた。
コンピューティングを売る側が現在の支出について「現時点で最も妥当な批判だ。無駄が山ほどある」と言っているのなら、その代金を払う側は何と言うのだろうか。トークンのコストが本来置き換えるはずだった従業員のコストをすでに上回っているのなら、いつになればその損益は逆転し始めるのだろうか。そして、その答えが「コストは最終的にその差を埋めるほど十分に下がる」というものなら、次に問うべきは「最終的にそうなるまでの間の損失を誰が負担するのか」だ。
歴史はすでにその答えを示している。インターネットは本物だったが、それでもバブル崩壊は起きた。その後に続いたのは「インターネットの縮小」ではなく、ようやく採算が取れるようになったインターネットだった。AIも同様の選別過程へと向かっており、その分岐はすでに見え始めている。Inversion AI(インバージョンAI)の共同創業者リサ・エメはこう語る。「AIを単に追加する機能として扱うのは間違いだ。AIネイティブ企業はモデルを中心にすべてを再構築する。そして、そうすれば、特化型モデルがより効果的に安くこなせる仕事に最先端モデルの料金を支払うことはなくなる。それはコスト削減ではない。アーキテクチャだ。今後10年で勝者になるのは、最大のモデルを動かす企業ではない。適切なモデルが適切なタスクを実行するシステムを構築し、人間の介入をますます必要としないワークフローへと移行していく企業だ」
これこそが、現在のAIブームがまだ価格に織り込んでいない地味な未来だ。重要なのは、どれだけ多くの「知能」を買えるかではなく、どれだけ実際に働かせることができるかだ。業界は「AIにできること」についてのあらゆる問いに答えてきた。だが今最も重要な疑問、つまり「資金が尽きる前にAIは投資に見合う成果をあげられるのか」という問いについてはまだ答えを出せていない。


