支出急増と人員削減の波
企業はその言葉どおりに動いている。テック大手は今年、7400億ドル(約115兆円)の設備投資を発表しており、この額は2025年から69%増加している。調査会社Gartner(ガートナー)はAIエージェント向けのソフトウェアへの支出だけでも2026年には前年比139%増の2070億ドル(約32兆円)に達すると予測している。
ここで計算がおかしな方向へ向かい始める。こうした支出と並行して、2026年には150を超える企業で11万5000人以上のテクノロジー関連の従業員が解雇されている。メタは8000人削減し、SentinelOne(センチネルワン)はリソースをAIに振り向けるため従業員の8%を解雇した。Wix(ウィックス)は従業員の5分の1を削減し、Block(ブロック)は従業員数を半減させ、Atlassian(アトラシアン)は1600人解雇した。
企業が示す根拠は一貫している。業務効率の向上とAIへのリソースの再配分だ。だが米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究ではAIによる自動化の採算がとれるのは職務の約23%のみであることが示されている。残りの77%では人件費の方が依然として安い。Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のチーフエコノミストは、AIへの投資が成長に大きく寄与するとは考えていないと明言している。Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)のパートナー、デビッド・カーンはその結果生じる差を数値で示した。現在のインフラ支出を正当化するには、AI企業は年間およそ6000億ドル(約93兆円)の売上高を生み出す必要があるという。2026年半ば時点でその差は縮まるどころか広がっている。
つまり、現在の状況はこうだ。企業は現在人件費よりも高いコストがかかるAIの費用を確保するために人的労働力を削減し、ほとんどの研究ではまだ実証されていない生産性の向上を追求するために、年間予算を数週間で使い果たすほどのペースでAIを利用している。
「トークンマキシング」の文化
文化的な側面はこの状況を最もよく物語っている部分かもしれない。アマゾンはエンジニアリングチームのAI利用状況を追跡するため、「KiroRank」と呼ばれる社内ランキングの仕組みを作った。だが、従業員がランキングを上げることだけを目的に意味のない作業でトークンを消費してランキングを操作するようになったため、KiroRankはいつの間にか廃止された。
メタも「Claudeonomics」と呼ばれる同様の追跡システムを構築した。アマゾンは従業員に「トークンを最大限消費する」よう促し、トークン消費量そのものを業績指標のように扱った。企業が生産した成果ではなくどれだけお金を使ったかによって評価するようになると、たいていの場合、支出そのものが成果となってしまう。
取締役会は最高経営責任者(CEO)にAIの導入を求めた。そして次に起きたのが、業界で「トークンマキシング」と呼ばれる、見境のないAI使用だ。第3段階では、経営陣が請求額の大きさに気づき、遅ればせながら「すべてのタスクに最も高価なモデルが本当に必要なのか」という疑問を投げかけている。企業のAI利用の約95%は、それほど高度な処理を必要としない業務であっても最も高価な最先端モデルで実行されている。
あるリソースが無駄遣いできるほど安くなれば、人は何も考えずにそれを浪費する。逆に、無視できないほど高価になれば突如として効率性に対して強い関心を示すようになる。AIもまさにその転機へと突き進んでいるようだ。ただ、その無駄は数十億ドル単位であり、毎月多額の請求書として突きつけられる。


