1年前の2025年、アンソロピックのリボルビング・クレジット・ファシリティは25億ドル(約3900億円)だった(リボルビング・クレジット・ファシリティは、借入限度額を設定し、必要時に資金を引き出せる融資枠を指す)。アンソロピックは米国時間2026年9月7日時点で、融資枠を150億ドル(約2兆3400億円)へ拡大する最終調整を進めている。1年前と比べて6倍の規模になるが、目論見書はまだ公表していない。融資枠の組成はモルガン・スタンレーが主導し、ゴールドマン・サックス、J.P.モルガン、シティも主要な役割を担う。融資団は17行に及ぶ。
IPOの日程も後ろへずれた。ロイターは9月4日、目論見書の公開は9月下旬となり、投資家向け説明会であるロードショーは早くても10月中旬まで始まらない見通しだと報じた。上場完了は11月3日の米中間選挙の数日前になる可能性がある。筆者は9月2日付の記事で、目論見書が数日以内に公開されるとの見通しを伝えていた。日程が変わったことは率直に認める必要がある。問うべきは、日程とともに何が変わったのかだ。
銀行は融資額を競い、IPO引受業務で有力な役割を狙う
銀行ごとの融資額は均等ではない。アンソロピックは各銀行に対し、IPOで希望する引受業務の役割に見合う規模で融資に参加するよう求めた。融資額は次の3段階に分かれていた。
・最も積極的に関与する銀行は各行約12億5000万ドル(約1950億円)
・次のグループは各行約10億ドル(約1560億円)
・役割が小さい銀行は約7億5000万ドル(約1170億円)以下
融資額が、IPO引受団で得られる役割を左右する
リボルビング・クレジット・ファシリティは通常、企業が各銀行にIPOでどの役割を任せるか決める前に最終確定する。今回、融資枠の組成で中心となる4金融機関は、IPOでも中心的な役割を担う。融資条件を定める文書だが、実質的にはIPO引受団で有力な役割を得るための価格表としても機能している。最上位の銀行に求められる融資額は12億5000万ドル(約1950億円)だ。
銀行は、難航すると見込むIPOで引受手数料を得るためだけに、これほど大きな融資を約束するものではない。IPO日程は後ろへずれたが、17行が融資に参加した。相反する2つの材料を比べれば、融資団の規模の方が判断材料として重い。



