AI向けデータセンターへの投資が米国経済を押し上げている。最大の要因は、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどのクラウドサービス大手が、AIを動かすために巨額の設備投資を続けていることだ。OpenAIやアンソロピックなどが提供するAIチャットボットの学習と運用に必要な計算能力への需要が急増している。
ここでは、AI向け計算需要の拡大とともに検討したい投資先を6つ選んだ。データセンター関連企業、不動産投資信託(REIT)、上場投資信託(ETF)から、それぞれ2つずつ取り上げる。選定基準は、高い成長率、キャッシュフロー、相対的な価格上昇率である。
AI関連銘柄はさらに上がるか、高い業績期待を超えられるかが焦点
AI関連企業の株価は2023年以降、大幅に上昇してきた。投資家にとって重要なのは、現在の株価からさらに上昇する余地が残っているかどうかだ。企業が投資家の予想を上回る業績を出し続けられる場合に限って、追加の上昇余地があるとみる。
投資家の期待はすでにかなり高い。売上高成長率は、マイクロソフトが30%台、アルファベットが50%台に達する。収益性も改善している。Google Cloudでは2026年4~6月期の営業利益が前年同期の3倍超となり、AWSの営業利益率は39%台に達した。
市場は、売上高成長率や収益性がさらに改善することを期待している可能性がある。オラクルでは、巨額の設備投資に伴って減価償却費が増え、利益を押し下げる可能性がある。市場は財務規律を保ちながら成長するマイクロソフトやアマゾンを評価し、資本構成のリスクが高い事業者には厳しい評価を下している。
最も可能性が高いのは、成長が続く半面、フリーキャッシュフロー(FCF)が2027年まで圧迫される展開だ。FCFは、営業活動で得た現金から設備投資に使った資金を差し引いたもので、企業が自由に使える現金をみる指標となる。
減価償却費の増加によって、1株当たり利益(EPS)の伸び率も売上高成長率を下回りやすくなる。成長率と利益の伸びに差が広がれば、株価の評価倍率が下がり、AI関連銘柄でも勝ち組と負け組が明確になる可能性がある。
株価を支える材料も残る。少なくとも2027年まではデータセンターの供給が需要に追いつかない可能性があり、高水準の需要が関連企業の業績を支えるとみる。
データセンター需要を支える、設備投資・契約・稼働率・電力の4要因
データセンター需要を押し上げる要因は4つある。
第1は、巨大なクラウド基盤を世界規模で運営する「ハイパースケーラー」の設備投資拡大だ。ムーディーズ・レーティングスは、ハイパースケーラーの設備投資額が2026年の7850億ドル(約122.46兆円)から、2027年には1兆ドル(約156兆円)へ27%増えると予測している。
第2は、将来の売上高につながる契約が大量に積み上がっていることだ。設備投資が増えているだけでなく、ハイパースケーラーの受注残も急増している。巨額の設備投資は将来の需要を期待して行われているだけではなく、すでに結ばれた契約によって一定の収益化が見込める。
例えばGoogle Cloudは2026年4~6月期、売上高が前年同期比82%増の247億6800万ドル(約3.86兆円)となった。営業利益は約3.1倍の88億1400万ドル(約1.38兆円)へ拡大し、受注残は5140億ドル(約80.18兆円)に達した。AzureとAWSも高い成長を記録している。
ハイパースケーラー全体では、記事執筆時点までの2四半期で残存履行義務(RPO)が約7000億ドル(約109.2兆円)増えた。RPOは、すでに契約を結んでいるものの、今後売上高として計上する予定の金額を示す。
第3は、データセンターの供給が急増しても、空き容量がほとんど増えていないことだ。CBREによると、北米主要市場の供給量は2026年上半期に前年同期比33.7%増え、1万903メガワットに達した。それでも空室率はわずか1.4%だった。
データセンター需要が供給を上回る状態が続いているため、事業者は賃料を引き上げやすい。3~10メガワット規模の契約では、賃料が8.3%上昇した。
第4は、大手ハイパースケーラーの財務力と電力を確保する力だ。マイクロソフトやアルファベットは多額の現金を保有し、負債が比較的少なく、FCFもプラスを維持している。
データセンターの新設では、大量の電力を安定して確保できるかどうかが大きな制約になる。JPMorgan Chaseによると、大手ハイパースケーラーは不足している電力供給の大きな割合を確保している。電力を確保する力が強いため、マイクロソフトやアルファベットなどの大手は、AI向け計算需要がさらに増えてもデータセンターを拡張しやすい。
成長率・キャッシュフロー・価格上昇率で選んだ6つの投資先
高い成長率、堅調なキャッシュフロー、相対的な価格上昇率を基準に6つの投資先を選んだ。過去1年間に大幅な価格上昇を経験していないのはマイクロソフトだけである。
マイクロソフトには高い成長率と強いキャッシュフローがある。株価が伸びていないことが割安さを示している可能性があり、投資機会になり得るとみる。
・アルファベット(GOOGL) ○資産タイプ:株式 ○4.13兆ドル(約644.28兆円) ○配当利回り:0.26%
・マイクロソフト(MSFT) ○株式 ○3.69兆ドル(約575.64兆円) ○配当利回り:0.72%
・エクイニクス(EQIX) ○REIT ○997億ドル(約15.55兆円) ○配当利回り:1.99%
・デジタル・リアルティ(DLR) ○REIT ○710億ドル(約11.08兆円) ○配当利回り:2.56%
・VanEck Semiconductor ETF(SMH) ○ETF ○運用資産残高:677.9億ドル(約10.58兆円) ○配当利回り:0.20% ○経費率:0.35%
・グローバルX データセンターリート&デジタルインフラ ETF(DTCR) ○ETF ○運用資産残高:21.5億ドル(約3354億円) ○30日SEC利回り:1.38% ○経費率:0.50%



