円高と株式売却で、輸出企業と主要株価指数に短期的な逆風
日本の大手輸出企業は、自動車やハイテク、産業関連企業などを中心に、長年円安の恩恵を受けてきた。円高になれば、海外で得た利益を円に換算した金額が減る。日本製品も海外市場で相対的に高くなる。
売買しやすい日本株は、借入金を使って投資している投資家が保有資産を急いで減らす際、現金化のために売られやすい。円高が輸出企業に与える逆風と、保有資産を減らすための株式売却が重なれば、日本の主要株価指数には短期的な下押し圧力がかかる可能性がある。
円キャリートレードが巻き戻されても、日本市場への影響は株価下落だけではない。
金利上昇と円高で、銀行・保険会社・国内企業が恩恵を受ける可能性
日本では数十年にわたり、ゼロ近辺だった金利によって銀行では貸出利ざやが圧迫され、保険会社などでは運用収益が伸びにくかった。金利が上がれば、銀行や保険会社には恩恵が及ぶ可能性がある。
円高は、輸入するエネルギー、食料、原材料の国内コストを押し下げる。輸入コストが下がれば、消費者や国内事業を中心とする多くの企業を支える要因になり得る。
円キャリートレードが終わるからといって、投資家が日本から撤退すべきとは限らない。日本への投資をやめるのではなく、銀行や国内企業などへ投資対象を変えるべき局面なのかもしれない。
円高を見込む米国投資家にとって、為替ヘッジの有無が重要
米国の投資家にとっては、日本株だけでなく、ドルに対する円相場も重要になる。iシェアーズ MSCI ジャパン ETF(EWJ)は日本株に幅広く投資し、為替ヘッジによって円相場による損益を打ち消さないETFだ。日本株が堅調に推移し、同時にドルに対して円高が進めば、米国の投資家は株価と為替の両方から恩恵を受けられる可能性がある。
為替ヘッジ付きファンドは、円高による利益も打ち消す
為替ヘッジ付きの日本株ファンドは、円相場による損益をできるだけ打ち消すよう設計されている。為替ヘッジは円安局面で利点があるが、円高を予想する投資家にとっては、期待する円高の効果まで打ち消してしまう。円相場そのものへ直接投資したい場合は、円相場への連動を目指す金融商品も検討できる。
G20会議をめぐる政治的な対立とは別に、日本の金利と為替の変化から、より大きな投資機会が生まれる可能性がある。市場は、政策当局が大きな転換を認識するより前に動くことが多い。日本の債券市場と為替市場は、投資環境が大きく転換する可能性を示している。
為替ヘッジなし日本株と金融株、円相場に連動する商品を組み合わせる
投資家にとって最も魅力的な方法は、為替ヘッジなしで日本株に投資するEWJと、選別した日本の金融関連企業を組み合わせることかもしれない。円高をより直接的に狙う場合は、円相場への連動を目指す米国上場商品「Invesco CurrencyShares Japanese Yen Trust」(FXY)も利用できる。
円が持続的な上昇局面に入るとの見方を投資判断の前提にするなら、私なら為替ヘッジ付きの日本株投資には、より慎重になる。
次の局面では、銀行・国内企業・円が有利になる可能性
皮肉なのは、円キャリートレードが終わっても、日本への投資機会まで終わるとは限らない点だ。長年、日本への投資では、円安を追い風にする輸出企業が有力な投資先だった。次の局面では、銀行、国内企業、円そのものが有利になる可能性がある。
低金利の円を利用する取引は世界最大級であり、その巻き戻しによって、日本では数十年来でも特に興味深い投資機会の1つが生まれる可能性がある。


