議長国キルギスが推進する2つの計画
キルギスは、まさにこの仮説を検証しようとしているようだ。SCOの議長国を務めるキルギスにとって、今回の首脳会議は単なる外交の場にとどまらない意義を持つ機会となった。過去の議長国も同様の取り組みを行ってきた。2017年にSCO議長国を務めたカザフスタンは同年に国際博覧会を開催し、首都アスタナを国際的な事業や投資の中心地として打ち出す取り組みを展開した。
今回の首脳会議を主催したキルギスには、特に重要な2つの計画があった。1つは、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道だ。これは、中国新疆ウイグル自治区のカシュガルからキルギスを経由してウズベキスタン東部アンディジャンに至る、全長約530キロの鉄道建設計画だ。この鉄道は中国と中央アジア間の陸路の短縮を図るもので、年間最大1500万トンの貨物輸送能力を見込んでいる。戦略的な側面としては、「中国・パキスタン経済回廊」を経由して、中央アジアとインド亜大陸を結ぶ南北貿易の経路を再構築する狙いもある。
もう1つは、より異色な存在である「タムチ特別金融投資区域(SFIT)」だ。キルギス政府主導で昨年設立され、今年7月に正式に始動したタムチSFITは、独自の金融規制と仲裁機構を備えた英国法に基づく法制度を導入し、国際的な金融管轄区域の構築を目指す経済特区だ。この取り組みが注目に値するのは、その経済的論理がSCOの枠組みを超えている点にある。キルギスはSCOからの資本を誘致しているが、同機構の首脳会議に便乗した過去の博覧会などとは異なり、西側の投資家を食い物にするような形は取っていない。キルギスはあらゆる国からの投資を積極的に求めているようだ。
同国は2005年のチューリップ革命(訳注:独裁体制を敷いていた同国のアスカル・アカエフ大統領が辞任に追い込まれた政変)以来、その民主主義的な実績から、ユーラシア大陸における米政府の「お気に入り」となってきた。だが、投資の面では必ずしも優遇されてきたわけではない。国際的な金融基準に基づく管轄区域を設立することで、キルギスは西側資本を歓迎し、育成を図る姿勢を明確に示している。したがって、タムチSFITは単なる投資優遇策ではない。これは、多様な資本がキルギスに流入する基盤を構築し、投資家の利益が地政学的な力関係に左右されることはないという安心感を与えるための試みだ。
SCOの今後の方向性
SCOを、新興の経済的要塞や一枚岩の保護主義的な連合だと誤解してはならない。加盟国はそれぞれ独自の、時には対立する利害を抱えており、小国にとっては、同機構の枠を超えた資本誘致の道を維持したいという強い動機がある。小国にとって最善の戦略は、中国かそれ以外の国かという二者択一ではなく、中国の物流経路建設やSCOの政治力、自国の地政学的中立性、国際投資を活用し、行動の自由を拡大することだ。
今回の首脳会議の重要性は、地政学の枠を超えている。非西側諸国による最大級の政府間組織の代表を一堂に集めることは、政治的に重要であるだけでなく、絶好の営業機会でもある。今回の首脳会議の最大の成果は政治的というより、経済的なものだったと言えるだろう。その成果は、SCOが今後も単なる政治的な調整の場にとどまるのか、あるいは、世界規模での資本や社会基盤、通商の流れを方向付ける重要な役割を担う組織へと進化するのかを決定付けることになるだろう。


