5月に韓国を訪ねて以来、筆者はジャージャー麺のことがずっと気になっていた。
「韓国のジャージャー麺が生まれた仁川中華街と旧日本租界を歩いて考えたこと」で書いたように、韓国では中国山東省発祥の炸醤麺(中国語読み「ジャージアンミエン」)がローカライズ化して、黒くて甘いソースの「チャジャンミョン」となった。
一方、日本の場合、中国由来という意味では韓国と「兄弟分」と言っていいのだが、一般に「ジャージャー麺」と呼ばれる料理は、訪ねる店によって味噌の味もそうだし、見かけも麺の種類もずいぶん違うことに気がついた。
日本の町中華や老舗の中華料理店などで供されるジャージャー麺は、主に黄色い中華麺の上に、甜麺醤(テンメンジャン)をベースにした甘辛く香ばしい熱々の肉味噌をたっぷりかけて、千切りのキュウリやネギを添えるのが一般的だ。
その後、いくつかの店で食べ比べしているうちに、味噌のしょっぱさや甘みにかなりのバリエーションがあるうえ、そもそも黄色い中華麺を使わない店があることも知った。
日本で初めて餃子に「味噌ダレ」を
その「黄色い中華麺を使わない店」の1つが、神戸南京町にある「元祖ぎょうざ苑」だ。
ここ数年、筆者は神戸南京町に何度も足を運んでいる。その理由は、もっぱら店主たちが21世紀の新華僑、すなわち「ガチ中華移民」へと世代交代することで、街の景観や商売の様相が変わっていく姿を観察することだった。
そのため、日本人経営の飲食店の存在を気に留めていなかったところがあったのだが、7月下旬、神戸南京町を歩いているとき、行列ができている1軒の店を見つけた(神戸南京町で行列店と言えば、豚まんの「老祥記」が有名だが、現在は工事中である)。
なんでもこの「元祖ぎょうざ苑」は、日本で初めて餃子に「味噌ダレ」を付けて食べるスタイルを始めたことで有名な老舗店で、創業当時から満州式の伝統を汲んだ「ジャジャ麺(炸醤麺)」を提供しているという。
30分近く並んで店に入ると、昔ながらの町中華という風情だった。客層は地元の家族連れや個人客などが多そうだが、メディアでよく取材されているせいか、筆者のような神戸以外の土地から来店した人たちもいるようだ。
迷うことなく、この店で「ジャジャ麺」と呼ばれている汁なし麺と焼き餃子を注文した(水餃子にすればよかったとあとで気づいたが、その理由は後述する)。供されたのは、自家製のピリ辛肉味噌と温野菜を添えたもので、麺はうどんのような平打ち麺だった。
それは筆者が中国の北京で食べた白い小麦麺の入った炸醤麺に似ていたのである。



