コロナ禍をきっかけに、感染対策や非対面受取の手段として「置き配」の利用が増加している。置き配とは、配達員が荷物を直接手渡しすること無しに、あらかじめ指定した場所に置いて配達を完了するサービスのことだ。
特に指定がなければ玄関やドア前に置くのが基本であるものの、このほかに、マンションや戸建てに設置された専用ボックスや、ガスメーターボックス、雨風が当たりにくい自宅敷地内の車庫や物置、敷地内の自転車のカゴ、ドアノブなどに吊り下げる簡易型の宅配バッグなどに「置き配」する形での荷物の受け渡しが広く普及しつつある(図表①)。

2025年2月時点では、宅配業者大手3社が宅配ボックスやコンビニ配送、置き配など非対面で届ける割合は、全体の25.6パーセントほどを占めるのが現状だ。
しかし、2026年3月31日に閣議決定された「総合物流施策大綱」を受けて、政府は宅配便の「置き配」など非対面による受け渡しの利用割合を2030年度までに約50パーセントまで引き上げるという目標を掲げている状況だ。
背景には「2024年問題」が
置き配が普及した最大のきっかけは、新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで、非対面や接触回避で荷物を配達するニーズへの高まりがある。
2020年頃のコロナ禍初期において、配達員と対面せずに荷物を受け取れる手段として拡大し、コロナ禍前の2019年のコロナ前には20パーセント台だった利用経験率が、コロナ禍を経て60パーセントを超えるまでに普及が進んだのだ。
また、ドライバー不足や再配達の増加といった物流の深刻な社会課題として挙げられていた「2024年問題」も背景にある。将来にわたって物流の持続可能性を考えるうえで、配達員の作業量を大幅に少なくできる「置き配」の更なる普及は、この問題の解決策の1つと考えられてきた。
加えて、置き配サービスを提供するには、これまでは認可の取得が必要であったが、今後は、国土交通省は宅配便の標準的な運送約款を改正し、自宅以外への配送を標準サービスとして位置づける方針だという。これで宅配業者は、新たな認可なしに置き配サービスを提供できるようになる。
「置き配」標準化に伴い「荷物が盗まれる」懸念も
郵便受けや宅配ボックスシェアNo.1の株式会社「ナスタ」が実施した「置き配に関する実態調査(第8回調査)」によると、2025年の「置き配」サービスの利用率(利用経験あり)は73.7パーセントだった(図表②)。

コロナ禍前の6年前に比べれば約3倍と言えるのかもしれないが、近年の利用経験率の伸び率を見てみると、その数字に鈍化傾向が見られている。その理由は何であろうか。
置き配サービス利用時のトラブル経験があった割合が34.4パーセントを占め、「荷物が盗まれた」経験がある人は3.9パーセントであった。
また、「置き配」が標準サービスになることについて不安を感じるかという問いに対しては、「非常に不安を感じる」14.6パーセント、「やや不安を感じる」28.4パーセントで、合計43.0パーセントが不安を抱いていることがわかっている。

具体的な内容としては図表3の通りで、特に「荷物が盗まれる」について72.3パーセントと突出していた。置き配に対する心理的ハードルの中心に「盗難リスク」があることは明らかだ。
物流2024年問題を背景に、「置き配」普及に向けた取り組みが2025年には大きく広がり、7割超の生活者に浸透したが、盗難をはじめとする不安をいかに解消するかは依然として大きな課題となっている。



