日本では1980年代にテレビ放映されたアメリカのSFドラマ『新スタートレック』では、宇宙船エンタープライズ号に「ホロデック」(ホロデッキ)という設備が搭載されている。現実とまったく見分けがつかない仮想空間で、自我があり自律したAIキャラクターたちと関わり合いながら、さまざまなシナリオの訓練ができたり、ただ休暇を楽しんだりできる。
そんなホロデックの劇中の進化を辿ることで、メタバースでの人とAIキャラクターの共有体験のあり方、作り方を考えるという研究が、筑波大学システム情報系の研究グループで始まった。その手始めとして行われたのが、『スタートレック』の14年間にわたるシリーズ中で進化してきたホロデッキの変遷を分析し、それをもとに研究の概念的基盤を提案することだった。

研究グループは、『新スタートレック』のエピソードに繰り返し現れるホロデックでのAIキャラクターとの体験の要素、つまり、探検や調査、問題解決をいっしょに行ったり、会話や食事などの日常的な時間を共にするといった要素を体系化し、そこから「キャラクター」、「世界」、「共有される出来事」、「物語」という4つの中心概念を導き出した。そして、その概念から構築される環境を「AIキャラクター・メディア」と名付けた。
今の技術でも、『新スタートレック』の舞台となった24世紀の技術には及ばないにせよ、メタバースでAIキャラクターと関わりを持つことができる。それを、よりリアルな方向に発展させるための技術や手法が、この概念的基盤を軸に検討されるようになれば、世界中の研究成果が共有できるようになり、研究が加速されるだろう。その技術の応用範囲は広い。

研究グループは今後、さまざまな技術を結合して、人とAIキャラクターとの長期的な関係形成、共有体験の蓄積、それに基づき継続的に発展する物語、両者が同じ世界で共に活動するためのインタラクション設計について研究を進めると話している。



