ニューロダイバーシティ(脳の多様性)について語ることに、企業は以前よりもはるかに抵抗がなくなってきている。より困難な試練は、その対話の後に何が起こるかだ。
ニューロダイバージェント(非定型発達などの脳の特性を持つ)の従業員にとって、インクルージョンは他の誰にとっても日常的に思えるような瞬間によって形作られる。面接がどのように行われるか、指示が口頭と書面のどちらで与えられるか、オフィスの騒音レベルはどの程度か、マネジャーがコミュニケーションスタイルをどう評価するか、終業後の付き合いが暗黙のうちに強制されているように感じられないか、そして配慮を求めることが周囲からの見方に影響を及ぼさないか、といったことだ。
こうした瞬間の積み重ねが、大きな意味を持つ。そして、雇用主がニューロダイバーシティは重要だと主張することと、実際にニューロダイバージェントの人々が持続可能なキャリアを築ける職場環境を作ることとの間にあるギャップを浮き彫りにする。
近年の研究もこの違いを裏付けている。ニューロダイバージェントの雇用を調査した56の論文を検証した2025年の系統的レビューでは、管理職への教育不足、排他的な職場の慣行、不十分な配慮などの障壁が特定された。一方で、理解のあるマネジャー、柔軟な働き方、支援技術などが、従業員の就業体験を改善し得る要因として浮かび上がった。
この課題は業務内容にとどまらない。経済的な安定、福利厚生へのアクセス、そして「助けを求めてもキャリアに悪影響は及ばない」という従業員の確信のすべてが、その人が本当に支援されていると感じられるかどうかに影響を与える。
採用前に早くも現れる障壁
生命保険会社スタンダード(The Standard)で「ワークプレイス・ポッシビリティーズ(職場における可能性)」部門のナショナル・プラクティス・リーダーを務めるダン・ジョリベット氏は、雇用のライフサイクル全体に潜在的な障壁が存在すると見ている。
障壁は、採用プロセスの開始時点から現れることがある。従来の採用活動はネットワークや紹介に大きく依存することが多く、これが一部のニューロダイバージェントの応募者にとって不利になる可能性があるとジョリベット氏は指摘する。また、対面やグループでの面接を企業が当然のように優先する場合、面接自体がさらなる障壁となり得る。
企業は候補者に対して、書面による事前選考の質問、質問事項の事前共有、カメラをオフにした電話面接など、複数の選考方法を提示できる。その目的は、採用基準を下げることではない。採用プロセスが、その業務を遂行する候補者の実際の能力を正しく測定できているかを見直すことにある。
バイアスは、より気づきにくい形でも入り込む。面接官は、アイコンタクトを絶やさない社交的な候補者に本能的に好印象を抱くかもしれないが、そのどちらの特性も、募集職種とはほとんど関係がない場合がある。
ジョリベット氏は、他者との関わりがほとんどない職務であっても、求人票に「優れたコミュニケーション能力」を求める記述があることを指摘する。企業は、どの要件が本当に不可欠で、どの要件が単なる定型句になっているのかを自問してみるべきだろう。
同様の考え方は、障害や病気療養休暇の後に従業員が職場にとどまる、または復職することを支援するスタンダード社の「ワークプレイス・ポッシビリティーズ」プログラムにも反映されている。
採用で終わらせてはならないインクルージョン
採用は測定しやすい指標であるため注目を集めやすい。しかし、定着率やキャリアの成長は、それよりもはるかに深い実態を物語る。
ジョリベット氏は、ニューロダイバージェントの応募者に対象を絞った採用活動を行っている企業は、依然として例外にすぎないと指摘する。同時に、経営陣が気づいているかどうかにかかわらず、実質的にすべての企業で、すでにニューロダイバージェントの従業員が働いているはずだと彼は主張する。
一部の従業員は、職場で求められる期待に合わせるために自身の特性や行動を隠しており、これは「マスキング」と呼ばれることが多い。ジョリベット氏は、仕事を獲得し、維持するために懸命に違いを隠そうとする人々を「ニューロカメレオン(脳のカメレオン)」という言葉で表現している。
いったん従業員を採用したら、マネジャーは必要な配慮を単発の事務手続きとして済ませるべきではない。研修、柔軟性、昇進の機会と同様に、キャリアパスの設計も重要である。
ジョリベット氏が推奨する選択肢の一つは、給与幅を広げ、優れた成果を上げた人がマネジメント職を強要されることなく昇給できるようにすることだ。また、個人の貢献者(スペシャリスト)としての立場を維持しながら昇進できるキャリアパスを整備するのもよい。マネジメント職を志望するニューロダイバージェントの労働者に対しては、管理職は、適格な候補者を見落とす原因となる偏見や思い込みを改めるべきだ。
多くの変更は、より幅広い層の従業員を助けることにつながる。面接の質問の事前共有、会議後の書面による議事録の配布、より静かなワークスペースの確保、柔軟なスケジュール調整などは、自身をニューロダイバージェントと自認しているかどうかにかかわらず、誰にとっても有用である。
「職場のカルチャー」を見直す必要性
職場の障壁のなかには、企業が「良い同僚であること」の一部と見なしている活動に組み込まれているものもある。
誰もが参加を期待されるオフィスの騒がしい雑談や、混雑したバーでのチーム懇親会を思い浮かべてほしい。ニューロダイバージェントの従業員が何度も断ると「非社交的」というレッテルを貼られることがあるが、問題があるのはその環境自体かもしれないのだ。
ジョリベット氏は、マネジャーは従業員がいつも避けている活動に注意を払い、代替案を検討することを提案している。突発的なグループディスカッションに慣れているチームなら、職場のチャットツールの使用頻度を増やすのもよい。終業後の騒がしい集まりを、より静かな場所でのディナーに変えることもできる。
ワークスペースも変更可能だ。静かなエリア、無香料のスペース、照明の工夫などは感覚への過度な刺激を和らげることができ、会議後の書面によるサマリーは、業務内容や期待される成果に関する明確な情報を従業員に提供できる。
ここから得られるより大きな教訓は、いたってシンプルだ。参加の形は従業員によって異なるということだ。同僚を深く気遣いながらも、飲み会は嫌いという人もいる。グループでのブレインストーミングは好まなくても、極めて優秀に仕事をこなす人もいる。従業員に複数の多様な関わり方を認めることで、インクルージョンはより有意義なものになる。
無視できない経済的な側面
職場のインクルージョンは、採用や配慮、カルチャーの観点から議論されることが多いが、経済的なウェルビーイング(精神的・身体的・社会的に良好な状態)もその議論に加える価値がある。
ある障害を持つ人の経済的困窮に関する研究によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)におけるデルタ株および初期のオミクロン株の流行期、障害を持つ人の52%が通常の世帯支出の支払いに苦しんでいた。人口統計学的要因を調整した後でも、障害を持つ人が経済的困窮を経験する確率は、障害を持たない人の2.78倍に達していた。
金融サービス会社ボヤ・ファイナンシャル(Voya Financial)の新しい調査は、企業が提供していると考えているものと、従業員が実際に体験しているものとの乖離を別の視点から示している。
障害者のインクルージョンと金融サービスに関するボヤ社の2026年の調査によると、雇用主の90%が、障害を持つ従業員が職場で支援されていると感じていると回答した。一方、障害を持つ従業員自身で「支援されている」と感じていると答えたのは76%にとどまる。
ボヤ社でカスタマー・インサイト&リサーチ部門およびボヤ・ケアーズ(Voya Cares)の責任者を務めるケリー・セッテ氏は、これらの数値の背景に心強い進展を見出している。2018年以降、従業員の障害に対する管理職の認識は81%から91%に上昇し、同僚の認識は72%から87%に増加した。障害を持つ従業員は、仕事上の責任のバランスを取る能力や、雇用主の柔軟性の面でも改善を報告している。
それでもなお、依然として存在するこのギャップは重要だとセッテ氏は指摘する。なぜなら、支援を提供することと、従業員がそれを安心して利用できることは別だからだ。
制度が書類上存在していても、従業員はそれをどこで探せばよいのか、自分の状況に適用されるのか、あるいは制度を利用することで偏見を持たれるのではないかと確信を持てずにいることがある。介護者(ケアギバー)も同様の懸念に直面する可能性がある。セッテ氏は、個人的なニーズを開示することで、仕事への熱意が足りないと思われたり、昇進や雇用の安定に影響が及んだりすることを恐れる心理を指摘する。
そのため、特に複雑な金銭的決断を伴う福利厚生においては、コミュニケーション自体がインクルージョンの一部となる。
利用しやすい明確な支援の必要性
「ABLEアカウント(障害者貯蓄制度)」は、その顕著な一例だ。
この税制優遇措置のある貯蓄口座は、要件を満たす障害者が、特定の資力調査を伴う政府給付金へのアクセスを維持しながら、認められた支出のために貯蓄を行うことを可能にする。しかし、ボヤ社の調査では大きな知識のギャップが判明した。障害を持つ従業員の51%がABLEアカウントの名前を聞いたことがあったが、その重要な特徴を正しく理解していたのはわずか2%だった。
「単に認知されているだけでは、理解や行動には結びつかない」とセッテ氏は言う。
この結果は、企業にとって考慮すべき重要な教訓を示している。福利厚生パッケージにリソースを追加することは、最初の一歩にすぎない。従業員には、アクセスしやすい情報、適切な教育、そして必要になったときにそのリソースについて学べる機会が必要なのだ。
同じ原則は、経済的な福利厚生の枠をはるかに超えて適用される。従業員が利用を恐れるような配慮に関するポリシーには、ほとんど価値がない。自分に適用されることに気づいていない柔軟な働き方のプログラムでは、従業員を助けることはできない。入社時に一度聞いたきりのインクルージョンの取り組みは、数カ月あるいは数年後に実際に支援が必要になったときには、存在すら忘れ去られているかもしれない。
また、セッテ氏は、障害を持つ従業員や介護者が一律に同じニーズを抱えていると思い込まず、耳を傾けることの重要性を強調する。個人によって、ABLEアカウント、特別ニーズ信託、受給権者プランニング、遺産相続、政府の社会保障給付、介護支援、あるいはその他の金銭的な懸念など、必要とする支援は異なるのだ。
日常の体験こそが本質
職場を包括的なものにする万能のポリシーなど存在しない。
その代わり、最も明確な兆候は日常的なやり取りの中に現れる。事前に快く質問を提示する面接官、会議の後に書面で指示を送るマネジャー、次の集まりにより静かな場所を選ぶチーム、あるいは従業員が実際に理解できる言葉で制度を説明する福利厚生部門、といった選択だ。
こうした選択は、障害を開示していない人や、自身がニューロダイバージェントであると自認していない人々にとっても、より良い職場環境を構築することにつながる。
これは、企業にとって最も有益な教訓の一つかもしれない。インクルージョンとは、すべての従業員が何を必要としているかをあらかじめ予測することではない。人々が異なる方法で働く余地を確保し、それによって能力が劣っていると見なされないよう、十分な柔軟性、信頼、そしてコミュニケーションを築くことを求めているのだ。
ニューロダイバーシティを重視する姿勢を示したい企業にとって、次の段階は、主張を繰り返すことではなく、従業員が日々直面する日常の業務習慣を見直すことかもしれない。
インクルーシブな職場の真の基準は、ニューロダイバーシティという言葉が企業の公式声明に盛り込まれているかどうかではない。ニューロダイバージェントの従業員が組織に入り、自らの仕事を行い、必要な支援を求め、キャリアにおいて成長し、その場所で未来を描けるかどうかである。



