サイエンス

2026.09.09 18:00

サメのDNAが明かす「老化の真実」、ヒトと共通する意外なメカニズム

stock.adobe.com

ただし、それには一つ重要な課題がある。トラフザメのエピジェネティック・クロックは、主に水族館で誕生し飼育下で過ごしてきた個体から得られたものであり、その加齢パターンは、野生下とは大きく異なる可能性がある。食性、ストレス、成長速度、病気への曝露、環境条件は、いずれも動物個体の生理的特徴に影響を与え、エピゲノムに変化を生じさせる可能性がある。つまり、水族館生まれのサメは、必ずしも野生のサメと生物学的に等価とは限らないのだ。

advertisement

研究チームは、野生捕獲個体でもエピジェネティック・クロックの検証を行い、結果は有望だったものの、飼育個体と比べて不正確でもあった。このことからも、精度向上のために、さらなる追加研究が必要であることがわかる。研究チームは、今後の研究ではより大きなデータセットを利用し、そこに年齢の判明している野生個体を可能なかぎり含めることや、経時的サンプリング(同一個体を長期間、継続的に調査すること)を実施することが必要であると述べている。

それでも、保全生物学者にとって、今回の研究は数々のエキサイティングな疑問(そして、現時点では未解決の疑問)の扉を開けるものだ。哺乳類、鳥類、爬虫類、硬骨魚類、軟骨魚類において、よく似た加齢の分子的シグネチャーが出現するのだとしたら、それは、加齢そのものの進化史について、いったい何を語るのだろう? こうしたメカニズムの中には、脊椎動物の生物学的特徴の基礎をなすものがあるのだろうか? 野生個体において、特定の環境条件がエピジェネティックな加齢を早めたり、遅らせたりすることはあるのか? 動物個体の「エピジェネティック年齢」が、実年齢よりも重要な何か(例えば、環境ストレスへの曝露経験が異常に高いレベルであること)を語ることはあるのか?

年齢は、動物の個体群について得られる最も重要な情報の一つだが、私たちが熱心に保全に取り組む多くの動物に関して、年齢を知ることは、いまなお驚くほど難しい。そうしたなかでトラフザメは、このような「隠れた」歴史を読み解く、新たな方法をもたらしてくれるかもしれない。研究はまだ始まったばかりだが、実に胸躍る展開と言えるだろう。

advertisement

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事