エコシステム

2026.09.09 15:15

「発明をイノベーションに変える」北欧フィンランドのVTTは日本企業の解になるか?

フィンランドの国営技術研究機関「VTT(フィンランドVTT技術研究センター)」のアンッティ・アラスト副社長

ディープテックを社会実装するインキュベーター

もう一つの際立った特徴が、研究成果をスタートアップとしてスピンアウトさせる強力なインキュベーション機能だ。所内の研究成果を事業化へ導くインキュベーター「VTT Launchpad(VTTローンチパッド)」は、2026年に英フィナンシャル・タイムズ紙からも欧州屈指のスタートアップハブとして選出されている。

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その代表格が、空気中のCO2と水、電気、微生物を用いて革新的なタンパク質「Solein®(ソレイン)」を生成するディープテック企業「Solar Foods(ソーラーフーズ)」である。2017年にVTTの研究者が創業した同社は、2024年4月にフィンランド・ヴァンター市で初となる商用工場「Factory 01」を稼働させた。気候や農地にいっさい依存せず、乳牛300頭分のタンパク質を省スペースのバイオリアクターで生産できるこの技術は、食糧生産のパラダイムシフトとして世界の注目を集めている。同社は日本の味の素とも戦略的提携を結び、シンガポールをはじめとするアジアや欧米市場への展開を進めている。

VTT Launchpadの投資モデルも合理的だ。VTTは蓄積してきた知的財産権や特許、ノウハウといった技術資産を現物出資し、対価としてスピンオフ企業の優先株を取得する。技術を開発した研究者自身がCTOなどの役職に就いてスピンオフ企業へ移籍することが多いため、経営陣や技術陣に元VTTの研究者が多く名を連ねることになる。

アラストは、「フィンランドからもっと多くのスタートアップが生まれてほしい」と願っているものの、同国内のスタートアップ調達資金のうち大きな割合をVTT発の企業が占めている現状と、手塩にかけて育てた優秀な研究者がスタートアップへと巣立っていく点については複雑な思いもあるようだ。「それでも」と、彼はこのように話す。

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「私たちが生み出すスタートアップが極めて魅力的でもある証拠です。私たちは普段から民間企業と密接に協業し、ビジネスの要請を肌感覚で理解しているため、より実用化に近いスタートアップを生み出すことができるのです」

Solar Foods(ソーラーフーズ)の共同創業者、ユハ=ペッカ・ピトカネンCTO(左)とパシ・ヴァイニッカCEO(右)  Courtesy of Solar Foods
Solar Foods(ソーラーフーズ)の共同創業者、ユハ=ペッカ・ピトカネンCTO(左)とパシ・ヴァイニッカCEO(右) Courtesy of Solar Foods
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文 = 井関庸介 写真 = 能仁広之

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