暗黒物質を捉えた可能性、LZ実験で異例の粒子衝突を1件観測
暗黒物質(ダークマター)は、物理学に残る最大級の謎の1つだ。科学者は重力に及ぼす影響から暗黒物質が存在すると考えており、宇宙にある物質の約85%を占めるとみられている。電磁波とは相互作用しないため直接捉えることが難しく、何でできているのかも分かっていない。
LUX-ZEPLIN(LZ、ルクス・ゼプリン)実験を進める物理学者のチームが、その正体に迫る手掛かりを捉えた可能性がある。研究チームが2026年9月1日にTeV Particle Astrophysics 2026で発表したデータによると、検出された粒子は暗黒物質の候補の1つである「弱い相互作用をする大質量粒子(WIMP)」だった可能性がある。
0.5%の確率では、物理学の「発見」にはまだ届かない
米サウスダコタ州の閉山した金鉱山の地下には、サンフォード地下研究施設がある。LZの検出器は液体キセノンを使って内部を通る粒子を捉える仕組みで、地下深くに設置することで宇宙線などの影響を減らしている。
検出器では、通常とは異なる粒子の衝突とみられる事象が1件観測された。既知の原因だけで同じ信号が生じる確率は約0.5%と算定されている。一般の感覚ではかなり低い数字に見えるが、物理学で「発見」と認める基準はさらに厳しい。「5シグマ」と呼ばれる水準では、統計的な偶然で同程度の結果が出る確率が約0.00003%、約350万分の1まで下がる必要がある。
2026年9月1日の発表時点では、検出された粒子が陽子の200倍を超える質量を持つWIMPだった可能性が最も有力とみられている。ただ、WIMPだったとすれば予想より高いエネルギーを持っていた。典型的なWIMPなら、もっと低いエネルギーの信号も検出されるはずだったが、そうした信号は観測されていない。WIMPではない可能性もあれば、通常とはかなり異なるWIMPだった可能性も残る。
700日超の未解析データが、1件の観測結果を左右する
観測されたのは1事象だけであり、この時点で結論を出すことはできない。今回の解析対象は2023年3月から2024年4月までに集めた220実稼働日分に限られ、研究チームにはまだ解析していないデータが700日超残っている。残るデータから同様の信号が見つかるかどうかが、今回の観測を理解する重要な手掛かりになる。
筆者は、初期段階の科学的発見をこのコーナーで普段はあまり取り上げない。それでも今回については「特に胸が躍る結果」だと評価している。暗黒物質や暗黒エネルギーなど、宇宙を構成する「もの」の多くは、科学者にとって性質を明らかにするのが難しい存在だったからだ。
暗黒物質が何でできているのかを示す証拠が本当に増えれば、宇宙への理解は根本的に変わる可能性がある。知識の進歩は地球上にも大きな変化をもたらし、2026年時点では想像すらできない技術の応用につながるかもしれない。


