その他

2026.09.09 08:00

イラン攻撃という失策の代償は数十年続く──燃料高から人的損害、退役軍人の支援まで

stock.adobe.com

stock.adobe.com

戦争では、戦闘中の支出だけでなく、終結後に発生する費用まで含めた総額が示されることはほとんどない。イラン攻撃も例外ではない。仮に戦闘がただちに終わっても、その後に発生する費用は数多く、一部は何年、何十年も続く。

イラン攻撃は米国の経済的な豊かさと安全を損なった。それにもかかわらず、なぜ攻撃を始めたのかについて明確な説明はなく、連邦議会の承認も得ていない。連邦予算や米国経済にどれほどの影響を及ぼすのかについて、概算すら示されていない。

燃料高だけではない、イランでは人的被害や環境被害も広がる

米国内で特に強く懸念されているのが、ガソリンと軽油の値上がりだ。イランによるホルムズ海峡の支配と、中東の石油インフラ損傷によって燃料価格が上昇した。ガソリン高は一般の米国人の家計を圧迫し、大統領の支持率にも打撃を与えた。軽油価格も過去最高値に達している。農家の経営コストが上がるため、軽油高は長期的にはさらに大きな影響を及ぼし、食料価格を一段と押し上げる可能性がある。

仮にホルムズ海峡をイランの支配から解放する合意が成立しても、燃料価格への影響がすぐに消えるとは限らない。イラン攻撃で損なわれた石油生産能力を元に戻すには時間がかかるため、価格への影響は戦闘終了後も続く可能性がある。

イラン攻撃の代償は金額だけでは測れない。イランでは爆撃によって人命が失われ、取り返すことのできない被害が生じている。死者を出した小学校への攻撃をはじめ、民間人が死亡・負傷した他の攻撃もあった。イランと周辺地域で損壊したインフラの修復にも巨額の費用が必要になる。修復費の一部を米国など地域外の国々が負担する可能性もあるが、実際にどこまで負担するかは分からない。

環境への影響も出ている。The Interceptに寄稿したアシュリー・ゲートは、紛争・環境監視機関(Conflict and Environment Observatory、CEOBS)の調査を取り上げた。CEOBSは2026年3月10日時点で、12カ国にまたがる、環境被害につながる恐れがある事案を300件超把握していた。対象はホルムズ海峡や他の水域の汚染から、化石燃料の大量使用にまで及ぶ。

米兵18人死亡・750人超負傷、装備修理と退役後支援も長期負担に

米軍も人員と装備の両面で大きな打撃を受けている。2026年2月28日に戦闘が始まって以降、少なくとも米兵18人が死亡し、750人超が負傷した。国防総省は死傷者という取り返しのつかない人的損失に加え、イランの無人機・ミサイル攻撃で損傷した米軍の通信設備や基地を修復する必要がある。戦闘で消費した弾薬をどこまで補充し、いくら支出するのかについても、連邦議会と協議して決めなければならない。

戦闘で損傷した主要装備については、新しい装備に交換するのか、修理して使い続けるのかという判断も必要になる。対象には、墜落した米軍機や、イランの攻撃で破壊された航空機も含まれる。米海軍では艦艇の消耗が特に深刻かもしれない。駆逐艦や空母は、整備や修理のために港へ寄ることなく、通常より長期間にわたって任務を続けている。

イラン攻撃が残す費用の中で最も長く続くのは、従軍した軍人への支援だ。今回の戦闘は地上戦ほど広範な破壊や人的被害をもたらさないとしても、長期配備を経験した海軍要員などには身体的・心理的な影響が残る可能性がある。現役中には医療や心理面での支援が必要となり、退役後には米国退役軍人省(VA)を通じて、障害を負った退役軍人への給付も続く。

次ページ > イラク戦争でも戦費を過小評価、安全保障関連支出は国防総省外で年約78兆円以上

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事