経営・戦略

2026.09.09 11:15

金利上昇でも増収増益「駅近✕AI」戦略の勝算──ブレイクスルー企業100(第3回)タスキホールディングス

タスキホールディングス代表取締役社長の柏村雄氏

タスキホールディングス代表取締役社長の柏村雄氏

不動産テック企業として投資用マンション開発を主力とするタスキホールディングス(166A 東証プライム、本社:東京都港区)が、2026年6月に東証プライム市場への市場変更を果たした。20年に東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場したタスキと、50年以上の業歴を有する新日本建物との経営統合により、タスキホールディングスが設立されてから2年。時価総額は経営統合時の2倍に迫る勢いだ。26年9月期第3四半期累計の売上高は前年同期比41.1%増の600億円、営業利益はほぼ倍増となり、増収増益を続ける。金利上昇や資材高騰という逆風が指摘されるなか、なぜ利益を伸ばし続けられるのか。東京23区・駅近物件への特化、自社開発DXシステムの外販、高い株主還元策の背景を、代表取締役社長の柏村雄氏に聞いた。

advertisement

 ──「不動産テック」を掲げていますが、まずは事業の全体像から教えてください。

柏村雄(以下、柏村):我々のメインの事業は、投資用不動産の開発です。創業時のマーケットリサーチで、コンパクトな投資用マンション、価格でいうと1棟3〜5億円くらいの商品が求められているとわかり、そこにフォーカスして商品化を進めました。

タスキはもともと、新日本建物の子会社として2013年に設立され、MBOによって17年に完全独立した会社です。当時、不動産業界はIT化が非常に遅れていたので、ITを使いながら生産性を高めていこうというのがコンセプトでした。

advertisement

業務システムを自社で構築しながら生産性を高め、「IoTレジデンス」と名付けた投資用マンションの開発を進めていったのが、今の事業のコアになっています。

──一棟販売ということなので、顧客は富裕層になるわけですね。

柏村:そうです。我々のターゲットは、相続税対策をしつつご家族に良い不動産を残したい方々です。現在、東京23区・駅近(徒歩5分)に特化しているのですが、これは不動産価格が安定しているのと、比較的高い家賃収入が得られ、空室率も低く抑えられるからです。

不動産投資では、せっかくマンションを買ったのに収益が上がらなくてキャッシュフローがマイナスになったり、相続した後もご家族が大変な思いをしたりといったことが起こり得ます。我々は、最初からキャッシュフローが回る物件に限定して供給することで、現オーナーも、譲り受けたご家族もしっかり資産運用ができることを目指しています。

──東京23区・駅近の需要は今後も底堅いと言えるのでしょうか。借りる側の視点では、家賃は相当上がっていて住みづらいようにも見えます。

柏村:実際、目黒区の駅から徒歩5分くらいで坪2万3000円という水準まで上がっていて、正直我々も驚いています。1〜2年前は坪1万5000円程度だったので、かなり上がってきていますが、それでも満室なんですよ。

住んでいる方は20代後半〜30代前半の単身のビジネスパーソンです。在宅ワークから出社への回帰が進むなかで、通勤時間が短くなる場所に住んでもらい、パフォーマンスを上げてもらうために、住宅手当などが拡充されていることが背景にあると思います。家賃の6割が補助される企業もあるようで、これくらいの手当があれば駅近で多少家賃が高くても住めるということです。

都会でも車社会の米国や、公園の周辺の価値が高い欧州とは違い、日本の場合は東京の駅周辺から開発が広がっていくという流れは当分変わりません。不動産価値という観点からも、旺盛な需要は続くと見ています。

──「金利が上がると不動産業界には逆風」とよく言われますが、現在の金利上昇局面で影響はありますか。

柏村:確かに金利上昇は我々にとっても調達金利が上がるのでコストが増え、お客様にとってもローン金利の上昇でコストが増えます。

しかし、我々のお客様は利回り重視の投資家というよりは、相続税対策がメインのオーナーです。しっかりキャッシュフローを回しつつ、資産承継できるような収益計画を組めば、大きな影響はないと考えています。

ここでも、東京23区・駅近の強みが発揮されます。価値の高い物件だからこそ、我々はコスト増を販売価格にしっかり転嫁することができるし、オーナー側も賃料を上げても高稼働を維持できるのです。

次ページ > 自社開発のDXが生む競争力

文=中居広起 写真=米田麻里子

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事