自社開発のDXが生む競争力
──自社開発したDXシステムというのは、具体的にどういうものなのでしょうか。
柏村:不動産業は地図を起点に仕事をすることが非常に多いんです。以前は紙の地図を使っていましたが、持ち歩くのが大変なうえ情報のインプットが限定的でした。
そこで、いつでもどこでも見られるクラウド上の地図に、入手した情報のインプットやアウトプットをリアルタイムでできるソフトを一から開発しました。
最初はSIerにも相談したのですが、不動産開発に精通したエンジニアが少なく、社内の人間がディレクションしながら作っていきました。本格的にエンジニアを雇用し始めたのはタスキが2020年に東証マザーズに上場したタイミングからです。
──他社にも同様のシステムがありそうですが、独自性はなんですか。
柏村:我々のシステムの強みは、自社の不動産開発で培ったナレッジをそのままシステムに落とし込んでいるところです。不動産会社が不動産会社のために自社開発したものなので、とにかく使い勝手がいい。
今はこのシステムを外部の不動産会社にもSaaSとして販売しています。これは不動産業界によりよい人材に入ってきてほしいという思いからです。先ほども言いましたが、不動産業界は他業種に比べてもDXが遅れています。このままでは優秀な人材が他業種に流れ、不動産や建設の担い手が減れば、街の開発が止まってしまう。
自社さえ成長すればいいという考え方ではなく、開発したシステムが業界全体の成長に貢献することで、それが巡り巡って自社にも返ってくるだろうと考えています。
──業界全体のDXを図るという発想ですね。マンションについてもIoTレジデンスから「AIレジデンス」に進化させようとしているそうですが、このふたつはどう違うのですか。
柏村:IoTレジデンスは、スマートロックやスマート照明、スマート家電など、遠隔操作ができるという利便性が特徴でした。これらの機能が一般的になってきた現在、次に目指す「AIレジデンス」では、「人が使う」住宅から「人を支える」住宅へと進化させたいと構想しています。
また、将来的にはヘルスケアの観点からも取り組んでいきたいと考えています。
日々の体調管理に始まり、住んでいる人の行動パターンやタイムスケジュールを把握したうえで、より住みやすい環境をつくる。赤ちゃんや高齢者の見守りといった技術発展も見据え、ヘルスケア分野やAI関連企業との提携を検討しています。
もちろん、現在当社が開発する物件に居住するのは20〜30代の単身者がメインなので、例えば洗濯物をたたんでくれるようなフィジカルAIの領域も検討していて、すでにそうした会社さんとも話をしています。
──中古再生の「リファイニング」事業も拡大していますが、これはどういう狙いですか。
柏村:リファイニング事業は3年ほど前から始めました。東京の限られた土地のなかで開発を進めれば進めるほど、将来的には中古不動産のストックも増えていく。街の機能や景観を維持し、都市の価値を持続的に高めていくためには、新築開発に加え、既存不動産を良好な状態で維持・再生していくことが重要だと考えています。
そうなると、既存のものをリノベーションして価値を上げ、サステナブルに維持していく流れになってくる。それを見据えて、中古物件の再生・バリューアップに取り組んだほうがいいと考えました。
加えて、今まで開発中心のフロー型ビジネスだったのを、中古物件を保有して賃料を受け取りながらバリューアップさせるストック型に変えることで、財務基盤も含めて収益が安定してきます。


