すでに気分が落ち込んでいるときに、悲しい曲ばかりのアルバムを聴くのは賢明な判断とは思えないかもしれない。真夜中を過ぎてまで、胸が張り裂けそうな小説を読みふけるのも同様だろう。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の心理生物学者であるデイジー・ファンコート博士は、悲しみを感じるクリエイティブな表現手段に頼ろうとする私たちの本能が、実は見かけよりもはるかに賢明であることを示すために10年を費やしてきた。ポッドキャスト番組「Hidden Brain」の最近の回で、同氏は、芸術は感情を処理するための心地よい一時しのぎではないと主張した。芸術は私たちの感情的な作業の驚くほど大きな部分が行われる「場」なのだという。
音楽を聴いたり、小説を読んだり、ノートにスケッチしたりして過ごすオフの時間は、困難な感情に健康的な方法で対処するための訓練になっているのだ。
研究:スケッチブックにできて、クロスワードパズルにできないこと
ファンコート博士は、創造性が感情のコントロールにどのように役立つかを測定する尺度を構築した。
彼女の研究チームが開発した「芸術的創造活動における感情調整戦略尺度」により、創造的な活動は3つの異なる経路で感情を調整することが明らかになった。
・回避
創造的な活動は気分転換、感情のコントロール、不安からの距離置きをもたらす。脳に不可欠な休息をもたらす
・接近
受容、再評価、問題解決を通じて向き合う。心にのしかかっていた事柄に立ち戻るが、今度は違った見方ができるようになっている
・自己発達
より確かなアイデンティティ、高い自尊心、より大きな主体性が育まれる。これは何かに習熟することで築かれる
同氏はポッドキャストで、シェイという仮名の弁護士を例に3つ目の経路を説明した。彼女は1週間の音楽コースに申し込み、そのわずか1週間で自分にできることの感覚がリセットされたという。
極めて重要なのは、忙しさそのものではなく、「創造性」が有効成分であるということだ。ある実験では、参加者に不快な画像を見せた後、自分の感情を描くか、幾何学図形を模写するかのどちらかを行わせた。その結果、自分の感情を描いたグループは気分が改善したが、図形を模写しただけのグループは改善しなかった。言葉のパズルを解いた3番目のグループも同様だった。単に注意をそらすだけでは不十分なのだ。自分自身の創造性を活性化させる必要がある。
芸術が将来の危機への備えにもなる理由
ファンコートが共有した、芸術と感情の交わりに関するより奇妙な発見は、衝撃的な映画や憂鬱なアルバム、ホラー小説などで他人が大惨事を経験するのを見ることが、将来自分が直面するかもしれない大惨事への備えに役立つという点だ。
ファンコートの説明によれば、芸術はあなたと感情との間に隙間(ギャップ)を作り出す。恐怖や悲しみを感じるものの、それに対して行動を起こす必要はない。そのリスクが実生活に影響を及ぼすことはないため、何かを修復したり、逃げ出したり、誰かの反応をコントロールしたりする必要がないのだ。彼女がポッドキャストで語ったように、「私たちはそれらの感情を経験するが、それに対処する必要はない」のである。



