食&酒

2026.09.13 12:00

1杯9000円のコーヒーをめぐる旅 コーヒー通は今、どこを旅しているのか

stock.adobe.com

思わず私は口走ってしまった。「60ドルのコーヒーはどんな味がするのですか?!」メッツァテスタの答えは、音楽的な比喩だった。「パナマ産は、他にはほとんどない独特の華やかさで知られています。非常に複雑でフローラル、そして長く残る余韻が特徴です。心地よい甘みと酸味があり、そして主張の強さがあります。素晴らしく、爆発的なワインの一杯のようです……甘みと酸味、さらにはわずかな苦みまでもが同時に生じるメロディやコードのようなものです。その輪郭がどれほど力強く、あるいは表現豊かであるか。すでにその極めて高いレベルに達している場合、いくつかのコーヒーには明らかな違いが現れます。それを理解し、追い求めるのが私たちの仕事です」。彼らは自分たちの仕事をよく理解している。Seyはパナマの「Elida Estate(エリダ農園)」のゲイシャを淹れており、エリダは国際品評会「ベスト・オブ・パナマ 2026」のゲイシャ・ウォッシュド部門で優勝している。

advertisement

街を挟んだウィリアムズバーグでは、ローマスタイルのカフェ「Little Fino(リトル・フィン)」で、実に見事なカプチーノが5.50ドル(約861円)で提供されており、7ドル(約1100円)の非の打ち所のないピスタチオケーキと一緒に楽しむことができる。シェフのアンドリュー・カルメリーニ(Andrew Carmellini)率いるNoHo Hospitality Group(ノーホー・ホスピタリティ・グループ)が運営しているため、洗練されたイタリアのトラットリアスタイルでコーヒーを提供するロースター「La Colombe(ラ・コロンブ)」の豆が期待できる。純粋な味と価値において、これはブルックリンで最高の1杯のひとつだ。La Colombeは、早い段階から大規模な体制を築いたため、サードウェーブ・ムーブメントを牽引するロースターの中では数少ない低価格を実現している。

昨今は、どの業者もエシカルな調達(世界のコーヒー業界において深刻かつ十分に実証されている問題である、強制労働や児童労働がないこと)を主張している。世界中の農園を継続的に審査するために要する旅費と時間は、高価格を正当化する……という理屈だ。では、農園での労働の実態とはどのようなものなのだろうか。

コスタリカのアプロセトゥへようこそ

私はそれを確かめるべく、コスタリカの高地にある人里離れたコーヒー農園を訪れた。小規模生産者の組合「Aprocetu(アプロセトゥ)」に加盟するアルノルド・ゲレーロは、コーヒーチェリー(木に実る肉厚の果実)が茂る霧深い森林の中、標高約3000フィート(約914メートル)の場所で農園を営んでいる。3月には数週間、十分な雨が降らない日々が続いたが、彼が心配しているのはそのことではない。暑さだ。

advertisement
次ページ > ベネズエラからの労働者の手を借りて、1日に約240キログラムを手摘みする

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事