組織における影響力の大きさが、難しい対話をどこまで率直に行えるかを決める。持っている影響力が大きいほど、率直に話すことが安全に感じられる。逆に影響力が小さいほど、言葉を濁したり、話をそらしたり、その場をやり過ごそうとしたりする傾向が強くなる。
経営幹部は通常、部下よりも会社の意思決定に大きな影響力を持つため、個人的なリスクをあまり負うことなく人事部門に率直に意見できる。マネージャーは同じ立場にはない。彼らはコーチング、評価、昇進などを人事や上級リーダーに依存しているため、自らの欠点を認めることには何かを失うリスクが伴う。マネージャーと向き合う従業員は、影響力が最も小さく、リスクをまともに引き受ける立場にある。
この非対称性は、あらゆる難しい対話の底流にある。力は一方向に動き、自己防衛はその反対方向に動く。この溝を埋める最良の方法は、こうした対話を「パートナーシップ」として捉えることだ。
筆者の経験では、自己防衛から真のパートナーシップへと移行するには、相手が実際にどうコミュニケーションを取り、フィードバックをどう受け止めるかについての具体的な洞察、つまり行動的な文脈が必要である。その文脈があれば、マネージャーの準備の内容が変わる。目的は「何を言うか」を練習することから、「それがどう受け止められるか」を予測することへとシフトする。単にメッセージを伝えるだけではなく、難しい対話は「あなたはトラブルに巻き込まれている」ではなく「私にはこう見えている、そしてこれはあなたに役立つはずだ」と聞こえるようになる。
経営トップの自信は、現場の明確さを意味しない
多くのCEOは、自社のリーダーが厳しい局面をうまく扱っていると感じている。筆者の会社が最近実施した200人超の経営幹部を対象とした調査では、約74%が「マネージャーは難しい対話を自力でうまくこなしている」と非常に自信を持って答えた。しかし、399人のマネージャーを対象とした別の調査では、「思うようにいかなかった直近のフィードバックや対立の場面」について尋ねたところ、懸念すべきパターンが浮かび上がった。多くは何を伝えるべきかは分かっていたが、それをどう言葉にするかで苦労していた。従業員の反応を予測できなかったり、対話が思わぬ方向に進み始めた際に軌道修正できなかったりした人もいた。少数派だが、対話の最も難しい部分そのものを避けてしまう人もいた。
マネージャーが複雑な力関係をうまく扱えないと、真のパートナーシップを築くために必要な自信を失う。相手がどうコミュニケーションを取るのかを具体的に理解していなければ、そのリスクへの本能的な反応は自己防衛となる。
マネージャーはしばしば、制度の中を通るのではなく迂回する
私たちの調査では、40%超のマネージャーが、面談の準備をする際に従業員の名前、業績に関する詳細、その他の機密情報を公開AIツールに入力したことがあると分かった。これは、彼らがどこに支援を求めるのが最も安全だと感じているかについて、何を物語っているのだろうか。人事部門や上級リーダーにためらいを見せることがリスクだと感じられる環境では、匿名のチャット画面が、即時かつ低リスクのリハーサルの場を提供する。問題は、汎用AIツールには、特定の従業員がどのようにコミュニケーションを取り、フィードバックを処理するのかについて、実質的な理解がないことだ。
さらに、個人的リスクを避けようとするこの試みは、結果として会社のリスクを招き入れる。機密情報が、プライバシーの保証のないツールに入力され、その見返りとして得られるのは、受け手となる人物を実際には理解していない一般的な助言である。この取引は双方にとって代償が大きい。一般的な助言は対話を取引的なものにとどめるため、従業員は警戒を解かず、力関係は実際には変わらない。真のパートナーシップは、マネージャーがその特定の個人が実際にどのようにフィードバックを聞き、処理するのかに基づいて対話を組み立てたときに初めて始まる。
人事部門にアクセスできることと、安心して使えることは違う
自己防衛は組織階層全体の上下に及び、誰もが弱さを見せることを心地よく感じられない環境を生み出す。Zety UKが米国の従業員1000人超を対象に実施した調査によると、職場を心理的に安全だと考えている人はわずか32%で、63%は雇用主が自分に対して忠実であり、長期的にコミットしてくれるとは信じていない。
マネージャーも上を見たときに、同じパターンに陥る。人事部門に助けを求めることは、不確実性を認めること、プロセスを遅らせること、あるいは意図していなかった記録を残すことのように感じられる場合がある。懸念がキャリア上のリスクであれ、官僚主義であれ、単なる利便性であれ、多くのマネージャーは1人で準備する方が簡単だと判断する。その結果、問題は解決されずに隠されるという孤立のループが生まれる。
孤立と自己防衛から抜け出すには、すでに多くの企業内に存在する共通認識を活用することが必要だ。リーダーは、特定の従業員が情報を受け止める方法に合ったフィードバックを望んでおり、マネージャーはその従業員のコミュニケーションスタイルに基づいたセルフサービス型の準備ツールを求めている。両者は独立して同じニーズを見出しているのだが、相手も同じことを求めていることに気づいていない場合が多い。
行動のパーソナライズが対等さを取り戻す
パートナーシップに対する一般的な懐疑論は、アカウンタビリティ(説明責任)に集中する。経営幹部はしばしば、伝統的な権威から離れることでパフォーマンス基準が薄まり、マネージャーが対立を避けるために期待水準を妥協するのではないかと懸念する。しかし実際には、行動のパーソナライズは基準の徹底をより容易にする。地位に基づく権力は権威を通じて服従を強いるが、これは自然に自己防衛と防御反応を引き起こす。パーソナライズは対話を客観的な行動の現実に根ざしたものにし、やり取りから個人的な脅威を取り除きつつ、基準はしっかりと保つ。
企業がマネージャーに行動的インテリジェンスを提供すれば、人材リーダーをリスクの高い公開型AIツールや完全な沈黙に向かわせる孤立のループを断ち切ることができる。行動的文脈は、レビュー用テンプレートや1on1ミーティングの計画書など、マネージャーがすでに使用しているツールの中に存在し、難しい対話の直前に手元にある。人事ビジネスパートナーは、そのデータを翻訳し、目前の対話にとって特定の傾向や好みが何を意味するかをマネージャーに解説することができる。マネージャーはまず低リスクで予行練習する機会も得られるため、本番の対話でぶっつけ本番でアプローチを試すことを避けられる。これによって、小さなコミュニケーションのズレが高コストな人事介入や望まない離職に発展する前に、早期に摩擦に対処する自信を得ることができる。
パフォーマンス管理を行動的文脈に根ざしたものにすることは、単にパートナーシップを築くだけではない。難しい対話そのものが行われるのを妨げてきた権力の不均衡そのものをも変えるのだ。



