静的なプロセスよりも「適応型マインドセット」が勝る理由
1911年、フレデリック・テイラーは「将来においては、システムが人間に先んじなければならない」と宣言した。20世紀の大半を通じて、経営はこの筋書きに従った。企業は、業務を標準化し、ばらつきを制御し、効率を引き出すために設計された、明確で安定したプロセスを優先した。利益を上げること(後に「株主価値の最大化」として定式化された)は、判断よりもプロセスを優先する姿勢をさらに強めた。
21世紀に入り、最も高い成果を上げる企業の間でこのパターンは逆転している。戦略を修正可能な仮説として扱い、環境の変化よりも速く学習し、成功しているモデルであっても手放す意思を持つ「適応型マインドセット」が、いまや硬直的なプロセスを凌駕している。以下の3つの事例がこの変化を物語っている。
ネットフリックス:DVDからストリーミングへ
2000年代半ばまでに、ネットフリックスのDVD郵送レンタル事業は極めて高い収益性を誇り、依然として成長を続けていた。経営陣はその「金のなる木」から利益を搾り取り続けることもできたはずだ。しかし、彼らはそれとは異なる未来に備えた。2007年、同社は既存のサブスクリプションへの無料アドオンとして「Watch Instantly(今すぐ観る)」を開始。これにより利用のハードルを下げ、ブロードバンド環境の改善に伴って顧客がストリーミングを体験できるようにした。物理メディア事業が依然として好調なうちから、インフラ、ライセンス、テクノロジーへの投資を継続し、その後、オリジナルコンテンツ制作(『ハウス・オブ・カード 野望の階段』から開始)を加速させてプラットフォームの差別化を図り、他社への乗り換えコストを高めた。DVDサービスは2023年に正式に終了した。
この移行には、意図的な自己破壊が必要だった。より大きなデジタルビジネスを構築するために、短期的な収益性の低下や、成功している中核事業がいずれ陳腐化することを受け入れたのだ。その後の10年間で、ネットフリックスは約715%という株主総利回り(TSR)を達成し、S&P 500の254%を大きく上回った。
エヌビディア:ゲーミングチップからAIインフラへ
エヌビディアは、PCゲーム用のグラフィックスチップメーカーとしてスタートした。2000年代半ば、同社のリーダーたちはその市場の限界を見抜いていた。2006年、同社はGPUを汎用計算向けにプログラミング可能にするソフトウェアプラットフォームである「CUDA(クーダ)」に、莫大な費用と数年を費やす賭けに出た。大規模なAI需要が生まれるはるか前から、製品ライン全体にCUDAサポートを組み込み、コストを増加させ、利益率を圧迫しながらも、開発者向けツールや研究パートナーシップに巨額の投資を行った。ジェンスン・フアンが明確に掲げた目標は、単なるグラフィックスカードのサプライヤーにとどまらず、コンピューティングプラットフォームの企業になることだった。
2012年以降にディープラーニングが急速に発展した際、エヌビディアはすでに事実上の標準(デフォルト)となるハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームとなっていた。その後、同社はAIワークロード向けのアーキテクチャを次々と設計していった。データセンター部門の売上高は、2015年頃には全体の数%にすぎなかったが、10年以内には大半(多くの場合80%以上)を占めるようになり、ゲーミング部門は引き続き重要ではあるものの、二次的な位置づけとなった。並列グラフィックスハードウェアを新しいコンピューティングパラダイムの基盤として扱ったことで、エヌビディアの過去10年間の総利回りは14,000%に達し、主要な上場企業の中で最高となった。
マイクロソフト:モバイルとの戦いから、モバイルの支援へ
マイクロソフトは、アップルのiPhoneによる支配に挑むため、Windows Phoneやノキアの買収に巨額の資源を投じた。これは、競合プラットフォームを押し潰そうとする、典型的な20世紀型の対応だった。その試みは失敗に終わった。2014年にサティア・ナデラがCEOに就任すると、同社は携帯電話のハードウェア事業からほぼ撤退した。戦いを続ける代わりに、同社はiOSやAndroid上でOfficeやクラウドサービス、その他のソフトウェアが真価を発揮できるようにし、同時にAzureとクロスプラットフォーム戦略に全力で取り組んだ。その結果、双方にメリットが生まれた。マイクロソフトのツールは、アップルやグーグルのデバイスを好む顧客にも届くようになり、それらのプラットフォームの利便性も高まったのだ。勝ち目のないハードウェアの戦いは、はるかに大きなサービスおよびクラウドでの成功へと転換された。マイクロソフトの時価総額は3.6兆ドル(約563兆円)に達し、10年間のTSRは838%と、S&P 500の254%を大きく上回っている。
適応型マインドセットが課題の再定義を可能にする
これら3つの事例には、共通のパターンがある。どの企業も、既存のプロセス重視のモデルを維持または最適化するだけでは、成長の余地が限られるか、あるいは衰退を招くという状況に直面していた。各社は課題を再定義し、成功していたDVD事業、確立されたゲーミングチップ事業、あるいは失敗した携帯電話プラットフォームを、より大きな何かのための土台(プラットフォーム)として捉え直し、それに応じて資金、人材、関心を再配分した。戦略は守るべきコミットメントではなく、修正すべき仮説として扱われた。以前の計画との整合性よりも、学習のスピードや方針を転換する意思のほうが重要だった。
これらの事例がかつての産業界における適応と異なるのは、適応への志向を意図的に組織全体に分散させようとした点だ。ネットフリックスの「自由と責任」のカルチャー、エヌビディアの技術主導の実験精神、そしてマイクロソフトが2014年以降に推進した「成長マインドセット」は、経営陣だけに限定されたものではなかった。多くのレベルの従業員が、単に固定されたプロセスを実行するだけでなく、問題を顕在化させ、仮説を検証し、手法をアップデートすることが求められている。これは、ビジョンや実験をトップに集中させ、工場の現場での作業を細部まで規定していたジョサイア・ウェッジウッドのような18〜19世紀の起業家たちとは対照的である。
すべての適応型マインドセットが同じ財務的成果をもたらすわけではない
適応型のカルチャーは、物理的領域やハイブリッドな領域において何十年にもわたる強みを生み出してきたが、すべての適応型カルチャーが同じ財務的成果をもたらすわけではない。3M、ヒューレット・パッカード、トヨタは、何十年も前に、主体性、実験、そして継続的改善という真の組織的な実践を確立していた。
それらの能力は、材料科学、コンピュータハードウェア、自動車の分野において、持続的な競争優位性をもたらした。しかし、それらは、今日の数兆ドル規模のデジタルおよびAIプラットフォームを特徴づける「限界費用ほぼゼロ」、「ネットワーク効果」、「グローバルなスケーラビリティ」を生み出すには至らなかった。適応型マインドセットは必要条件ではあったが、十分条件ではなかった。その領域の経済的特性もまた重要だったのである。
なぜ今、適応型マインドセットが求められるのか
より広い教訓は明らかだ。プロセスを軽量で修正可能なものにとどめておく限り、プロセスは依然として重要である。テクノロジーや市場が急速に変化する環境において、優れた業績を上げる企業とは、プロセスを軽量かつ修正可能に保ち、新たな証拠が現れたときに自身の見解をアップデートする人材を評価し、より大きな機会が訪れたときには、たとえ利益の出ているモデルであっても放棄する覚悟がある企業だ。昨日の状況に合わせて最適化された静的なプロセスは、負債となる。顧客価値、学習、および課題を再定義する勇気に裏打ちされた適応型マインドセットこそが、決定的な強みとなっている。
また、適応型マインドセットは、現在進行中のマネジメントのパラダイムシフトにおける他の主要な原則、すなわち「短期的な利益よりも顧客価値を優先すること」や「権限の階層よりも能力のネットワークを優先すること」とも組み合わせる必要がある。その影響の大きさは、これら3つの原則すべてを取り入れられるかどうかにかかっている。



