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2015.12.07

どの新興市場がいま狙い目なのか?

Gil C / shutterstock

ファンドマネージャーや銀行アナリストが年末の総括に取りかかろうとするなか、今こそ新興市場を見直そうという機運が高まりつつある。とはいえ、あらゆる資産クラスにまんべんなく資金を投じるのは火傷の元、選択と集中が必要なのだ。では、どこに集中運用をするべきなのか?

新興国をひとつの均質なブロックと見ることがいかに誤りであるのかを知りたければ、トルコに目を向けるのがいい。たしかにこの国にも、ほかの新興国市場を襲ったマクロ経済の大波に同じく打ちのめされている一面はある。フェデラル・ファンド金利の上昇は資金借入難に直結し、国際政治の緊張の高まりや、主要な輸出先であるヨーロッパ市場の不振も響いているのだ。

ただし、ほかの新興国とは明確に異なる点がトルコには数多くある。この国に有利に働くのは、まず石油輸入国であることだ。おかげで、原油安が国家財政にはプラスの要因になる。次に、トルコでは人口の半数が30歳未満だ。これはたとえば、一人っ子政策のせいで労働人口が徐々に尻すぼみになりつつある中国と比較しての強みにもなる。さらに、金融部門の健全さは新興国全体でも一、二を争うものだ。政情は長らく不安定だったが、11月初旬の総選挙で政権与党が大勝したことで、指導力が明確に強化された。

いっぽうマイナス要因として挙げられるのは、通貨のリラ安が続いているせいで石油輸入国として得た利益も帳消しになりつつあり、しつこい経常赤字にも苦しめられていることだ。さらに、近隣には、シリアやイラン、イラクがある。ヨーロッパを目指す難民がまず通るのはトルコだ。おまけに、国内及び近隣国にまたがって居住するクルド人との紛争もあるし、トルコ空軍はつい最近ロシア軍のジェット機を撃墜したばかりだ。

つまり、トルコの株式や通貨、経常赤字に目を向ける際には、考慮すべき点が数多くあるのだ。ならば、「新興市場」というばくぜんとした対象に単純に資金を投じる前に、そういった要因をどうやって考慮に織り込むべきなのか?

ファンド・マネージャーに一任するというのもひとつの手だ。スタンダード・ライフ・インベストメンツ社は温度ごとに色分けをするかのようなヒートマップという手法で、どの新興市場に投資するのかを決めている。同社チーフエコノミストのジェレミー・ローソン氏によれば、その手法はうまく働き、5月に起きた資産価格の変動を予測することにも役立ったという。
ハンガリー、韓国、それにロシアが比較的低リスク、いっぽうブラジル、トルコ、ペルーは高リスクと当時同社は発表したのだ。それ以後の数カ月間に関しては、同社の推奨に従っておけばおおむね間違いないという結果になった。

どの新興市場をどう選ぶのかを、投資家たちも懸命に学び取ろうとしている。ハートウッド・インベストメント・マネジメント社のマイケル・ステインズは、「2016年に投資家たちに突きつけられる問いは、既存市場の株式から新興市場の株式への転換をいつ始めるかというものになるでしょう」と述べている。ハートウッド社自体による新興国への投資はこのところ限定的なものにとどまっているが、投資拡大の機会は常にうかがっているのだという。
「転換の時期がいつかは、新興市場の成長見込みが確固としたものになる頃、おそらく2016年の後半から2017年にかけてになるのではないでしょうか」と、ステインズ氏は重ねて述べた。

資産配分に知恵を絞るインベストメント・ディレクターなら誰もがそうするように、彼が新興市場を検討する際に真っ先に目を向けるのは中国であり、しかも見立てはかなり肯定的だ。「中国政府当局には経済成長を支えるツールが備わっていると思いますし、中国経済をより消費者主導型のモデルへと転換することも可能だと見ています。第4四半期のデータの動きからも、安定化の兆候を見ることができます」と、ステインズ氏は語っている。

言うまでもなく、新興市場は向かい風を受け通しだし、いまだ危機を脱するには至っていない。「2015年におけるイギリスの国内総生産の成長が、ブラジル、ロシア、南アフリカ、メキシコのそれを上回ることになるという予測が出されることになるだなんて、ほとんどの人は考えもしなかったはずです」と、アバディーン・アセット・マネジメント社のシニア・インベストメント・マネージャーであるベン・リッチー氏は語っているが、これまでのところ市場は落ち込んでいる。資産運用は慎重に、選択と集中の意識をもってやらなければならないし、信頼の置けるファンド・マネージャーに任せる場合でも、その二点をくれぐれも重んじてもらうようにしよう。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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