インドで最も利用者の多いタクシー配車プラットフォーム事業者「OLA(オラ)」と中国の国内最大手「嘀嘀快的 (ディディ・クアイディ)」、サンフランシスコを拠点とする「Lyft(リフト)」、シンガポールのGrabTaxi「(グラブタクシー)」は2016年上期から、インドと中国、東南アジアと米国で外国からの旅行者を対象とした新たなサービスを提供する予定だ。
アプリを通じたタクシー配車サービス市場は現在、米国が最大。だが、最も急拡大しているのはインドと中国だ。4社は新たなパートナーシップの下、ウーバーに代わる存在として、利用者が外国の旅先でも自国内と同じサービスが利用できる環境を整える。利用者らは、支払いにも自国の通貨を使うことが可能となる。4社はいずれも互いの国の市場に関する知識を得ることができるほか、各市場でのビジネスに必要な資源を入手することになる。
オラの共同創業者であるバーヴィッシュ・アガーワルCEOはインド時間の12月4日朝にプレスリリースを発表。今回の提携に胸を躍らせているとした上で、「世界の数百の都市で、4社合わせて数億人に上るユーザー層に対し、シームレスな交通手段を提供できるようになる。我々は、各社のこれまでのイノベーションと成功を共有することができる」と述べた。
また、嘀嘀快的のCheng Wei(呂伝偉)CEOは同じ声明の中で、同社はすでに中国国内で主要な垂直市場のいくつかを確立しており、ビッグデータの利用によって新たな、そしてより良いユーザー経験を提供したい考えであることを明らかにした。今回の提携は、各社の技術や専門知識の活用によるサービスの向上につながるとして、「世界のライドシェア業界の多様性と持続力にとっての勝利だ」と主張した。
4社はいずれも、ソフトバンクからの出資(嘀嘀快的は子会社のアリババを通じて)を受けている。ある意味では、世界の配車サービス市場には「ソフトバンク対ウーバー」の構図ができ上がったともいえる。
各社の現状
4社のうち3社は、各国のタクシー配車サービスの大手だ。インド最大手のオラは、先ごろソフトバンクなどから5億ドル(約614億円)の追加出資を受け、評価額が約50億ドルに達した。102都市でサービスを提供しており、所有するタクシー車両数は約35万台に上る。また、1日当たりの予約数は100万件を超えている。
中国の嘀嘀快的は国内360都市で営業。市場シェアは83%に達している。1日当たりの配車台数は約700万。シャトルバスの運行や企業向けのサービスも行っている。
シンガポールを拠点とするグラブタクシーは、東南アジア有数のタクシー配車プラットフォーム事業者。隣国マレーシアやインドネシア、フィリピン、タイでもサービスを提供している。6ヵ国での予約数は150万件を超える。また、タクシーのほかバイクタクシーや登録を受けた自家用車を使った輸送サービス、相乗り(カープール)サービスに加えて、デリバリーサービスも行っている。
Lyftは米国の190都市で運行。月間の配車件数は約700万となっている。同社の共同創業者であるジョン・ジマー社長は今回の提携について、「単なる提携ではない。世界の各都市の将来に、より大きな影響を及ぼす機会となる」と述べた。
4社のこれまでの調達資金は、総額70億ドル(8,600億円)に上る。一方、ウーバーは80億ドルとなっている。