顧客への助言に使える時間を、AIが最大75%まで引き上げ
AltruistとSavvyは、ファイナンシャルアドバイザーを置き換えるのではなく、その力を引き出そうとするテック系スタートアップの一群に属する。ボストン コンサルティング グループ(BCG)のパートナー兼マネージング・ディレクター、ルノー・ファジェスによれば、アドバイザーが顧客と過ごす時間は現在、全体の半分ほどにすぎない。残りは面談の準備と事務作業に食われている。ファジェスは、AIによってそうした作業を半減させ、アドバイザーが時間の最大75%を顧客への助言に充てられるようになると見込む。BCGの試算では、アドバイザーを支援するAIスタートアップは、米国のウェルスマネジメント会社が毎年ソフトウェアに投じる支出のうち、最大200億ドル(約3兆1200億円)を取り込みうる。
面談準備と記録づくりをAIに任せ、事務時間の10〜15%分が戻る
ユタ州ソルトレークシティーに拠点を置くJump(ジャンプ)の共同創業者兼CEOパーカー・エンスと、サンフランシスコを拠点とするZocks(ゾックス)の共同創業者兼CEOマーク・ギルバートも、そうした企業を率いる2人だ。アドバイザーが担う退屈だが欠かせない仕事の多くを、AIで自動化できるとにらんでいる。
ともに2022年創業の両社は、アドバイザーがすでに使っているソフトウェアと連携し、AIで面談用の資料をまとめ、メモを取り、顧客の記録を更新し、面談後のフォローアップメールの下書きを作る。Jumpは1億ドル(約156億円)超を調達し、3万5000人以上のファイナンシャルアドバイザーに使われている。Zocksは5000社以上に導入され、6500万ドル(約101億円)を調達した。うち4500万ドル(約70億円)は、1月にライトスピード・ベンチャー・パートナーズとQEDインベスターズが主導したシリーズBによるものだ。PitchBookによれば、直近の企業価値評価はJumpが5億2500万ドル(約819億円)、Zocksが2億6600万ドル(約415億円)だった。
「面談が終わって5分後には、アシスタントが(フォローアップの)メールの下書きを用意していて、私はそれに目を通すだけです。メモは顧客管理システム(CRM)に入っていますし、やるべきことも簡潔なリストになっています」と、Zocksの利用者でApollon Wealth Management(アポロン・ウェルス・マネジメント)共同創業者のロバート・ゴーマンは言う。「アドバイザーの事務作業の時間が、10〜15%分は本人の手に戻ってきました。その分を、顧客とより深くつながることや、新たな預かり資産を獲得するための時間、心の余裕、あるいは新しい収益の創出に回せます」。
Chromeのブラウザー拡張機能かアプリから使えるJumpのAIは、さらに1歩踏み込む。優れた対応事例をもとに面談を振り返り、改善につなげる仕組みを作ることで、アドバイザーが職業人として腕を上げるのを助けるのだ。エンスは自社の「Jump Grow」機能についてこう語る。「顧客との会話が終わると、私たちのAIが面談を振り返って、こう伝えます。『ここはうまくいきましたね。この場面なら、社内で最も優秀なアドバイザーはたいていこうします』と」。


