ポルシェの4ドアスポーツカー:マカン ターボの走りを検証

Amnarj Tanongrattana / shutterstock

ポルシェのマカン ターボについて語る前に、はっきりと述べておきたいことがある。マカン ターボがアウディ Q5を模倣しているとする一部の人間の主張は、まったくの見当違いだと言っていい。より標準的で価格を抑えたマカンを作ることもできたはずだが、ポルシェが当初からこのモデルを特別なものにするつもりだだったことは明らかだ。
Q5に見られる特徴のうちの30パーセントがこのモデルにも採用されているものの、エンジン、ギアボックス、ドライブシステム、そのすべてをコンピューターを駆使した最新の技術を用いて融合させることで得られるダイナミックなパフォーマンスは、まさにポルシェの真骨頂だ。

マカン ターボはポルシェの4ドア車の中でも最高クラスのパフォーマンスを誇ると言われている。
フロントエンジン4輪駆動の911 カレラに勝るとも劣らないモデルだ。

9万3,000ドルの標準価格にスポーツクロノパッケージなどのオプションを追加すると、マカンターボの価格はキャデラック エスカレード プラチナム等の大型ハイパフォーマンスSUVと同等だ。3トンの重量と直線的な美しいフォルムを特徴とする、3列シートのエスカレードを原子力飛行機に例えるとすれば、マカン ターボは素早く小回りの効く戦闘機のようなモデルだ。その他のドイツ車メーカーのモデルと比較しても、マカン ターボの小ぶりさは際立っている。

その点こそがマカン ターボの最大の魅力だ。マカン ターボはSUVというよりも、トールボーイスタイルの4ドアスポーツカーだ。このモデルの魅力は車体の大きさやシート数ではない。スポーツクロノパッケージを装着したマカン ターボは、4.4秒で時速約100キロに到達し、これは最高クラスのボクスターGTSのパフォーマンスに匹敵する。
ライドハイトと重量こそ顕著だが、マカン ターボはスポーツカーとしての資質を確実に備えている。ステアリングの軽さと機敏さ、そして振動の少ないスムーズな走りはまさにポルシェの専売特許だ。パナメーラ ターボ Sと並び、マカン ターボはポルシェの4ドア車の中でも最高クラスのモデルだといえる。

マカン ターボはV8エンジンのコンピューター・モデリングによって開発された、3.6リッターV型6気筒ツインターボエンジンを搭載している。その柔軟な走りはまさに変幻自在だ。最高出力294kW(400PS)を誇り、1,350から4,500rpmの幅広い回転域で550N・mの最大トルクを発生させる。
また、オートマチックモードとマニュアルモードを選択可能な7速のPDKを装備。エンジンとトランスミッションは、パナメーラとボクスターでも採用されているソフトウェアと連動することで、極めてスムーズなギアチェンジを可能にする。スピードを出した状態でのギアチェンジは、一流のミュージシャンによる楽器の演奏のようになめらかだ。

スポーツクロノパッケージを追加することで本領を発揮するスポーツプラスモードも、ガラガラに空いた高速道路を走る場合を除けば極めて有効だ。ポルシェを購入するならば、スポーツクロノパッケージの追加は積極的に検討すべきだろう。

3連丸型メータにおける特筆すべき点は、フロントとリアホイールに送られるトルクを示すバーグラフだ。マカン ターボのデフォルトモードは後輪駆動だが、ギアボックスの後部に配置されたマルチプレートクラッチを通じて前輪へトルクを配分することができる。アクセルを踏むとほぼ同時に、トルクの約40パーセントが前輪へと配分される。雪道などを走行する場合は、トルクを100パーセント前輪に配分することも可能だ。トルク配分の変更はスムーズそのもので、気になることはまずないだろう。

高級感と実用性を併せ持ったインテリアデザインも、マカン ターボの魅力のひとつだ。ポルシェのお家芸である、素早くダイナミックなシフトチェンジについては触れるまでもないだろう。ケイマン GTSのSUV仕様車のようだという意見もうなずける。

小ぶりな外観からは想像がつかないほど、ヘッドルームは十分に余裕がある。大柄の男性4人を乗せた状態でも狭く感じることはない。短時間のドライブであれば、後部座席に3名乗せても問題ないだろう。大きめのベビーカーでも楽に収容できるため、小さな子供たちがいる場合でも安心だ。標準的な家族構成であれば、マカン ターボはファミリーカーとしても理想的な選択肢だといえる。

室内には趣味やレジャー、スポーツのためのゆとりある空間が広がる。トレーラーを使用すれば約2,000キロのものを動かすことが可能であり、その気になれば屈強な競走馬を引きずることもできる。トレーラーなしでも最大約750キロのものを動かせるという。

SUVは週末のお出かけ用ではなく、日常的に利用されるべき車だ。耐久性の面においても、ポルシェのSUVには大きなメリットがある。ポルシェの生産台数は比較的少なく(測定用の試験車台数も限られている)、そのすべてが元トヨタの優秀なエンジニアたちが誇る、1990年代半ばから受け継がれる極めて精巧なプロセスによって生産されている。
コンピューターを用いた最新の技術が駆使されているという点は他のドイツ車メーカーと同じだが、マカン ターボのようにボルト1本にまで行きわたる徹底した品質管理をもって作られているものはそう多くない。長く乗れば乗るほどに、そのタフな作りが実感できるはずだ。

アウディ Q5、レンジローバー イヴォーク、BMW X3など、マカン Sの競合車となるラグジュアリーなコンパクトSUVは数多く存在するが、マカン ターボは違う。マカン ターボは他のドイツ車メーカーのハイクラスSUVよりもひと回り小さく、そして軽量だ。驚異的な6.3リッターV8エンジンを搭載したメルセデス GLE63 クーペや、BMW X6Mももちろん魅力的ではあるが、ジャガーのスペシャル・ビークル・オペレーションのチームが現在開発しているというF-Pace Rが発表されるまでは、マカン ターボは競合車が存在しない唯一無二のモデルであり続けるだろう。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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