VWは中国で稼げなくなり、ドイツ生産も採算割れになった
フォルクスワーゲンがかつてない弱い立場に置かれているのは間違いない。欧州最大の自動車メーカーとして成功を収めてきた企業である。生産する車は、販売台数の多い量販ブランドであるシュコダ、セアト/クプラ、フォルクスワーゲン自身のブランドから、上級市場で成果を上げてきたアウディやポルシェ、さらに最上級に位置するベントレーやランボルギーニまで広がる。
繁栄を支えてきたのは2本柱だった。中国で稼いだ巨額の利益と、大きな成功を収めてきたドイツの生産基盤である。ドイツでは技術者が数十年にわたり、高度なセダンやSUVを造って輸出する分野で世界をリードしてきた。ところが中国で得ていた巨額利益はほぼ消え去り、ドイツでの生産は採算に合わなくなった。利幅の薄い電気自動車、フォルクスワーゲン車より品質が高くて価格も安い中国製EV、高騰する電力料金、そして米国の関税も、状況を助けてはいない。
合意は不可能とみられ、経営側は臨時株主総会も検討
合意の知らせが届く前、話がまとまる見込みは「ミッション・インポッシブル」といった類いの決まり文句で語られていた。
投資調査会社バーンスタインによれば、大半のメディア報道と自社の情報源は、対立する両陣営の立場に大きな隔たりがあり、隔たりは埋めきれない可能性もあると示していた。一方の陣営は、ブルーメが率いる取締役会である。議決権の過半数を握る大株主ポルシェSEが、取締役会を強く後押ししていた。もう一方の陣営は、従業員の利益を代表する従業員代表委員会と、議決権の20%を持つニーダーザクセン州だった。
フォルクスワーゲンは第二次世界大戦後、他社に例のない企業統治の仕組みを守り続けてきた。最終的な決定権を握るのは監査役会であり、20議席の半分を労働組合側が占める。残る議席のうち2つは通常、フォルクスワーゲンが本社を置くニーダーザクセン州の政治家に割り当てられてきた。
「(ポルシェSEは)踏み込んだ再建とコスト削減を求めていた。反対側にいる従業員代表委員会とニーダーザクセン州は、2024年12月に合意した水準を超える譲歩に後ろ向きだった。実際、取締役会が監査役会を迂回し、臨時株主総会を開いてフォルクスワーゲン株主に直接訴えるという前例のない手に出るのではないかと、メディアで公然と取り沙汰されていた。株主総会でなら、施策を押し通すのに必要な75%の賛成を得られるとみられていた」。バーンスタインはリポートでこう記した。
合意には、4つの工場で生産している車種を段階的に打ち切る内容が盛り込まれたが、工場そのものの閉鎖は入らなかった。フォルクスワーゲンの自動車生産事業と部品事業を切り離す構想も、議論の対象にならなかった。
ロイターの金融論評部門であるロイター・ブレイキングビューズは、合意の細部にはブルーメの計画を妨げかねない点があると指摘した。


