イタリア南部シチリア島の町ナロが、1ユーロ(約180円)で住宅を提供する計画を開始した。シチリア島南西部アグリジェント県にあるナロは現在、1ユーロで住宅を購入または売却する計画に関心のある買い手と売り手を募集している。
買い手の場合、1ユーロで購入した住宅は、主たる住居や別荘、民宿、商業活動の拠点や本社のいずれかの用途で利用することが条件となる。この計画は、日本人を含む外国人のほか、企業や財団も対象としている。
過疎化対策としての「1ユーロ住宅」
「1ユーロ住宅」の取り組みは、新たな自治体が参加するたびに話題となる都市再生計画だ。その多くはイタリアで実施されているが、フランスやスペインでも同様の試みがある。
こうした取り組みの先駆けは、2015年に英リバプールで実施された計画だ。リバプールでは当時、老朽化して空き家となった住宅を適切な住まいに改修することを条件に、1ポンド(約210円)で提供する計画が開始された。多くの場合、物件の改修には数万ポンドの費用がかかった。
仕事や生活の場を求めて人々が大都市へ流出し、地方では空き家が増加する中、高齢化や人口減少に歯止めをかけるための試みは近年、成果を上げている。購入者は、昔ながらの趣を残す村や町での暮らしに魅力を感じている。石造りの建物や石畳の通り、小さなアーチ、中世の面影を残す中庭といった風景を思い浮かべてみよう。提示される価格は象徴的なものに過ぎないが、その支払いは、購入者が自治体に対して時間と資金を投じるという約束を果たすための第一歩となる。その見返りとして、地域社会は新たな住民を迎え入れることで活性化し、21世紀へと歩みを進めることができる。
ナロから車で1時間ほどの距離にあるシチリア島のムッソメリは、10年前は存続の危機に瀕していた。英紙タイムズによると、同町の1ユーロ住宅計画は功を奏し、かつての住民も戻ってくるなど、町は再生を遂げた。同町はごみ問題や交通の便の悪さ、文化面の選択肢の少なさといった生活環境の課題を抱えていたが、欧州連合(EU)からの財政支援やシチリア島最大の都市パレルモへの公共交通機関の利便性向上、アルゼンチンからの医療従事者の受け入れなどにより、町は様変わりした。これまでに600戸の住宅が外国人に売却され、うち180戸は1ユーロで取引された。ムッソメリには現在、18カ国の国籍を持つ人々が暮らしている。新たな活気が生まれたことで、カフェや民宿が開業し、観光客も訪れるようになった。
英紙インディペンデントの調査によると、イタリアの住宅の改修費用は比較的安く、物件の広さや状態に応じて2万〜5万ユーロ(約360万〜910万円)程度となる。不動産業者によると、住宅の購入を検討する場合、改修費用として1平方メートル当たり1000ユーロ(約18万円)程度を見込むべきだという。仏国立住宅協会(ANAH)によると、フランスでは、こうした1ユーロ住宅の場合、100平方メートルの物件で約8万ユーロ(約1500万円)の改修費用がかかる。



