OpenAIやAnthropic、GoogleなどのフロンティアAI企業による最新の発表だけを追っていると、企業が自律的でAIネイティブな組織へと急速に変貌を遂げる直前にあると信じてしまうのも無理はない。経営幹部(C-suite)にとって、そのストーリーは非常に魅力的だ。AIエージェントがナレッジワークの大部分を代替し、組織はコストを劇的に削減できるかもしれない。あらゆる業界がほぼ一夜にして再定義される可能性がある、というものだ。
私は、この見立ては方向性としては正しいが、時間軸を誤っていると考えている。この違いは重要だ。AIが今後10年をかけて企業を変革するのであれば、組織には学び、適応し、オペレーティングモデルを再設計し、価値を取り込む時間がある。そうした変化が今後12〜18カ月で起きるなら、多くの企業は深刻な混乱に直面する。大企業全体で私が見ている状況に基づけば、証拠は後者よりも前者のシナリオをはるかに強く示している。
先行するヘッドラインと、追いつかない現実
AIをめぐる大胆な主張の多くには、健全な懐疑心を持つべきである。それは、この技術に能力がないからではない。AIが極めて強力であることに疑いはなく、フロンティアモデルは目覚ましいペースで進化し続けている。しかし、実験室で能力を示すことと、企業を大規模に変革することの間には、大きな隔たりがある。
数週間おきに、新しいモデルがソフトウェア開発者、弁護士、カスタマーサービス担当者などの業務の多くをこなせるようになった、という話を耳にする。こうした発表の背後には一定の真実があるかもしれないが、個別のタスクを実行できることと、職業全体やオペレーティングモデルを作り替えることは大きく異なる。
こうした発表には、別の目的もある。投資家の信頼を高め、これらのモデルを構築する企業の評価額を支えることだ。ビジネスリーダーは、マーケティング上の勢いを業務上の現実と取り違えないよう注意すべきである。
企業は前進しているが、進歩は漸進的である
当社の顧客基盤全体を見渡すと、組織が立ち止まっているわけではない。数百に及ぶAI施策が進行している。主な結論は、ほとんどの企業がAIツールで既存プロセスを再発明するのではなく、それを改善することに注力しているという点である。経営幹部からは、ソフトウェア開発、カスタマーサービス、社内生産性向上のためのAIツールに多額の投資をしてきたと頻繁に聞く。トークンコストは大幅に増加した。それでも、生産性の向上は総じて控えめである。
これには多くの理由がある。ツール自体がまだ不完全な場合もあれば、組織が働き方を変えていない場合もある。従業員にAIアシスタントを与えるだけでは、変革的な成果はめったに生まれない。場合によっては、人員削減どころか、かえって増員が必要になったケースすらある。
過去2年間、私たちは一貫して、テクノロジーは方程式の一部にすぎないと見てきた。組織再設計こそが、はるかに大きな課題であり続けている。
最大の障壁はテクノロジーではない
今日、制約要因はモデルそのものではなくなりつつある。組織は、適切な成果を適切なコストで一貫して提供し、業務上の説明責任を果たせるAIシステムを構築する必要があり、それは依然として難しい。同時に企業は、ガバナンス、ワークフロー、インセンティブ、トレーニング、組織構造を見直さなければならない。こうした変化は、新しいソフトウェアを導入するより本質的に時間がかかる。
これが、多くの組織が慎重に動いている理由である。オペレーティングモデルの再設計を誤るリスクは、短期的な生産性向上を上回ることが多い。私たちは皆、実験を進めている。しかし、実験を短期的な変革と混同すべきではない。
取締役会はより適切な期待値を保つ必要がある
AIをめぐるハイプサイクルの影響の1つは、取締役会レベルの期待が非現実的になっていることだ。私は、CEOがシリコンバレーのAI企業を訪問し、AIによってコストを40%削減せよという指示を携えて戻ってくる、という話をよく耳にする。それは理解できる野心である。しかし、近い将来の現実として、現時点の証拠が裏づけているものではまったくない。
歴史的に、組織はアウトソーシング、労働コスト裁定、オペレーティングモデルの再設計を通じて劇的なコスト削減を実現してきた。AIは、企業全体でそうした成果を一貫してもたらす能力を、まだ示していない。よりよい問いは、40%の生産性向上が可能かどうかではない。それを現実的にどの時間軸で達成できるかである。私の見立てでは、そうした成果の多くは達成可能であることが示されるだろう。ただし、それは6〜18カ月ではなく、3〜5年の時間軸においてである。
2つのAIの道のりが同時に進んでいる
企業が2つの異なるAI戦略を追求している例を、私はますます多く目にしている。
1つ目は進化的な道筋である。ソフトウェア開発を例に取ろう。当社の調査によれば、今日のソフトウェア開発ライフサイクルにAIを適用することで、組織は30%に近い生産性向上を達成できる。しかし、その効果を得るには、チーム構造、開発プロセス、マネジメント手法などを変える必要がある。AIコーディングアシスタントを追加するだけでは、十分な恩恵は得られない。この進化は今後18カ月から2年にわたって進み、さらに3〜5年の時間軸で追加的な成果が積み上がっていく可能性が高い。
2つ目の道筋は再定義である。今日のプロセスを改善するのではなく、そもそもどのような業務が存在すべきなのかという、第一原理に基づく問いを投げかける。カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)は、その違いをよく示している。進化的アプローチは、対応時間の短縮、サービス提供コストの低減、担当者の生産性向上に焦点を当てる。再定義のアプローチは、まったく別の問いを立てる。顧客の問題を、期限どおりに、完全に解決するにはどうすればよいのか、という問いである。
その問いに答えるには、カスタマーサービスを営業、財務、フルフィルメント(受注・発送業務)、マーケティング、その他の隣接機能と統合する必要がある。AIは、既存タスクを単に自動化するものではなく、根本的に異なるオペレーティングモデルを可能にするプラットフォームとなる。この2つ目の道のりははるかに野心的であり、成熟するまでに5年以上を要する可能性が高い。
競争優位を維持する鍵は忍耐である
AIから最大の恩恵を受ける組織は、必ずしも今日最も大きな発表をしている組織ではない。現実的な期待値を設定し、テクノロジーと並行して組織変革に投資し、進化的な改善と長期的な再定義の双方を同時に追求する組織である。
AIが企業運営を再形成することは間違いない。私は今でもそのことを確信している。ただ、今日のヘッドラインが示唆するようなペースについては、そこまで確信を持てずにいる。
ほとんどの組織にとって、変革はすでに始まっている。ただし、それは数カ月ではなく数年をかけて進んでいる。この違いを認識するリーダーは、より良い意思決定を下し、資本をより効果的に配分し、最終的には、より持続可能な価値を獲得することになるだろう。



