こうした変化は、アーティストの人格のあり方にも及んでいる。例えば、ユース層に人気のPeterparker69(Jeterが本号表紙)やTohjiといったラップアーティスト、ブランデー戦記やmuque、iVyといったロックバンドの作品では、ボーカルや作曲だけでなく、サウンドデザイン、アートワーク、MV、SNSでの発信までが一体となり、ひとつの人格をかたちづくっている。作品と日常の境界は曖昧になり、複数の面を横断しながら世界観を更新し続けることが、ごく自然な創作のあり方になっているのだ。そこでは、リスナーはSNSの投稿ひとつ画像一枚でさえも、作品世界を構成する重要な表現として受け取っている。
「美しさ」を発見するための場所
さらに、インターネットは新しい美意識そのものを生み出す場所にもなった。近年流行が続くY2Kは、その象徴だ。現在共有されているY2Kのイメージは、2000年前後を忠実に再現したものではない。SNSやPinterest、TikTokを通じて無数のユーザーが編集を重ね、「2000年代っぽさ」を共同で再構築した結果として生まれた、新たな美学である。
ほかにも、リミナルスペースやドリームコア、フルティガーエアロ、バレエコアなど、インターネット上では無数の新しい美学が次々と言語化され、ユース層の共感を通じてシェアされている。
かつて映画や小説、アート、ファッションがそうであったように、インターネットは今、アーティストが世界を理解し、美しさを発見するための重要な参照軸になっているのだ。
作品を発表し、コミュニティを形成するための「場」だったところから、「世界はこう見える」「これを美しいと感じる」という感覚そのものを育てる環境へ。彼らの作品が新しく感じられるのは、サウンドが斬新だからということだけではなく、インターネットが変えた世界の見え方そのものを、初めて作品に投影しているからなのだろう。
インターネット以後の人間はいかに世界を見て、何を美しいと感じるのか。ゆえに、現在のU30カルチャーを理解するには、流行している音楽や映像、ファッションだけを追っていても「なんだかよくわからない」で終わってしまいがちだ。彼らが日々どんな画面を見て、どんな画像を保存し、どんなタイムラインを眺めていて、それがどのような美的感性で創作活動に反映されているのか──その世界を見るレンズまで含めてとらえ直したとき、彼らの表現は初めて、輪郭をもち始めるのだと思う。
つやちゃん◎文筆家、プロデューサー。インディペンデント・アーティストをサポートする一般社団法人B-Side Incubator理事。さまざまなメディアで執筆活動を展開、企画や監修も手掛ける。著書に『星野源論』『スピード・バイブス・パンチライン』など


