プロダクトマネジメントは、おそらく企業の中で最も複雑な役割の一つである。営業、エンジニアリング、製造、調達、マーケティング、財務といった多様なスキルセットを組み合わせる必要があるからだ。
純粋な営業畑の人材をこの役割に就ければ、エンジニアとの接点づくりに苦労するかもしれない。エンジニアを就ければ、完璧な製品をつくることに注力しすぎて、いつまでもローンチできない可能性がある。必要なのは、その中間に立ち、どちらかに過度に深く入り込みすぎることなく、両方の領域を理解する人材である。
プロダクトマネジメントはしばしば過小評価される。組織の日々の活動においては、しばらくの間、それがなくてもやっていけるからだ。プロジェクトを売り、実行することはできる。売って、実行し、また売って、実行する。
しかしプロダクトマネジメントは、企業が将来も売り続けるための位置取りを担う。次の四半期のために行うものではない。2年後に備えるために行うものだ。短期に目を奪われる企業は、プロダクトマネジメントこそが長期的な成長と繁栄をもたらす手段であることを忘れがちである。
プロダクトマネジメントは営業から始まる
プロダクトマネージャーの仕事は営業から始まる。営業実績は、市場が組織に与える最も重要なフィードバックの一つだからだ。案件を失注すれば、市場からフィードバックを得ることになる。多くの案件を失注すれば、市場からはさらに多くのフィードバックが返ってくる。
したがって、なぜ失注したのかを理解することは、自社製品がどのように機能しているか、そして何よりも、どのように機能して「いない」のかを把握するための最も強力な手段となる。
まず商談の結果と、その背後にある理由を理解する。そのうえで、それを製品機能、エンジニアリング、市場投入戦略、あるいは価格設定へと結び付ける。そこから、何を調整し、何を変える必要があるのかを見極める。
次に、エンジニアリング、サプライチェーン、製造、マーケティング、価格設定に関する投資判断へと移る。1件の商談における営業上の結果から出発し、特に長いサイクルを持つ事業では、成果が出るまで数カ月、あるいは数年かかるかもしれない投資へと至るのである。
プロダクトマネージャーは他部門に計画を実行させなければならない
何を変える必要があるのかを理解することは、出発点にすぎない。現実には、そうした修正の実行は多くの場合、さまざまな事業機能に依存しており、その大半の人々はプロダクトマネジメント部門の配下にはいない。
自社製品の価格が高すぎるとしよう。調達部門はより安価な材料を購入する必要があるかもしれない。エンジニアリング部門は設計を見直す必要があるかもしれない。製造部門は生産方法を変える必要があるかもしれない。営業部門のリーダーは価格を下げる必要があるかもしれない。
そうした人々の誰もが、必ずしもプロダクトマネージャーの下で働いているわけではない。プロダクトマネジメントはビジョンを示し、明確なKPIと継続的な対話を通じて、そうした部門に責任ある行動を促さなければならない。
調達部門が5社の新規サプライヤーを認定する必要がある場合や、調達先を別の地域にシフトする必要がある場合、それらの行動には組織全体に可視化された明確なKPIが必要となる。優れたプロダクトマネージャーは、他部門に影響を与え、明確な説明責任のラインを通じて実行を促すのだ。
王冠なき王
ここに、プロダクトマネジメントがとりわけ難しくなる理由がある。分野横断的な知識だけでも難題だが、それに加えて、自分の部下ではない人々にも動いてもらわなければならない。
エンジニアリング部門はプロダクトマネージャーのために働いているわけではない。エンジニアリング部門のリーダーのために働いている。しかし、製品の再設計が必要であるために商談を失っているのなら、プロダクトマネジメントは、その再設計を優先事項にすべきだとエンジニアリング部門を説得しなければならない。
調達部門は調達責任者に報告しているかもしれず、その責任者はあなたと同格かもしれない。それでもなお、製品の経済性を改善するために必要な行動を取るよう、そのチームを説得しなければならない。
それには影響力と、非公式なリーダーシップが求められる。王冠があれば、王でいることは容易である。王であれば、人々は権限があるから従う。
プロダクトマネージャーには王冠がない。人々が従うのは、その発言に筋が通っているからでなければならない。
この役割の複雑さは、技術的な側面とリーダーシップの側面の両方にある。
技術的卓越性とプロダクトリーダーシップを混同してはならない
これこそ、組織がプロダクトマネジメントのリーダーを選ぶ際、技術的に最も優れた人物を機械的に選ぶべきではない理由でもある。
完璧な製品を作ろうとし、市場からのフィードバックに何度も調整を加えようとすると、時間がかかりすぎたり、好機を逸したりする。製品がいつリリースの基準に達したかを見極める必要がある。
プロダクトのリーダーに就いたエンジニアは、市場で通用し、後から調整可能な「十分に優れた」製品を作ることよりも、技術的な完璧さを過度に追求してしまいがちである。大半の製品は、一度リリースした後に顧客からフィードバックを得て、組織として微調整を加えていくものだ。
私の経験上、まずは実用的な製品を市場に投入し、フィードバックを得て、調整し、段階的に再リリースしていく方が良い場合が多い。これにより、すべてが完璧に整うのを待つのではなく、適切なタイミングで市場のチャンスを捉えることができる。
「オーケストレーター」を採用せよ
企業がプロダクトマネジメントのリーダーを選ぶ際、最も重要なスキルは必ずしも深い技術的専門知識ではない。
第一に、すべての始まりである営業部門との強いつながりを持つ人物が必要だ。
第二に、その人物はエンジニアリング、調達、製造、その他の事業機能の言語を理解している必要がある。
最も重要なのは、自分の部下ではない人々にも動いてもらうことに抵抗がないことだ。そのためには、自信、リスクを取る姿勢、優れたコミュニケーション能力、そして正式な権限なしに影響を及ぼす力が必要である。
優れたプロダクトマネージャーとは、必ずしも最高のエンジニアや最高の営業担当者であるとは限らない。彼らは「オーケストレーター(調整役)」なのだ。複数の事業領域の言語を理解し、組織の異なる部分をつなぎ、市場からのフィードバックを協調した行動へと変換する役割を担う。
それこそが、プロダクトマネジメントという役割を非常に特殊なものにし、同時に極めて重要なものにしている理由だ。
優れたプロダクトマネージャーは、多くの意味で、王冠なき王なのだ。



