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リーダーシップ

2026.09.04 13:38

AIが加速させる「経営幹部と10代」に共通するアイデンティティの危機

stock.adobe.com

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デイヴィッド・ブルックスは6月28日付のアトランティック誌の記事「The People Who Will Thrive in the AI Age(AI時代に活躍する人々)」で、AIは意志をめぐる根本的な問い、すなわち人間にはなお本物の選択を行うための内面的な構造が備わっているのかという問いを突きつけていると論じた。8月10日には、マーク・ザッカーバーグが超知能に関する自身のビジョン「The Future is For Everyone」を発表した。ザッカーバーグが描くのは、現在生きているどの人間の専門家よりも賢いパーソナルAIに、数十億人がアクセスできる未来である。

両者はいずれも、現実に存在する何かに向き合っている。だが私は、彼らが見ている危機は違うと思う。

問題は、AIが人間を上回って考えるかどうかではない。AIはそうするだろう。問題は、AIが鏡をこちらに差し戻したとき、その背後に立つ誰かが残っているのかということだ。

私は20年以上にわたり、企業文化、社内政治、人事評価、そして誰が昇進し、誰が去るかを左右する暗黙のルールに身を置いてきた。その中で一貫して気づかされたのは、企業社会で起きている最も危険な現象は自動化ではないということだ。それは「アイデンティティの消去」である。そして私たちは、最初の大規模言語モデル(LLM)が学習を開始するはるか前から、この消去を実践してきたのだ。

誰も測定していない「信念の危機」

私の研究では、マネージャーの87%が職場で個性を抑圧されていると回答している。チームを率い、戦略を推進し、次世代のために文化を形成する役割を担う人々の10人中9人近くが、会議室に入る前に自分自身を「編集」することを学んでしまっているのだ。

私たちはこれを危機とは呼ばない。「プロフェッショナリズム」と呼んでいる。

しかし、ギャラップはこの現状を裏付ける数値を発表している。同社の2025年のデータによると、エンゲージメントの低下による損失は世界全体で10兆ドル(約1600兆円)に上り、これは世界のGDPの約9%に相当する。米国心理学会(APA)の報告では、仕事に意味を見出している労働者はわずか46%にとどまる。さらに、米医務総監の報告によると、成人の約50%が慢性的な孤独感を抱えているという。これらの数字は、機械に敗北した労働力を示しているのではない。自らの意見を押し殺すたびに、静かに自分自身を放棄していった労働者たちの姿を物語っている。

私はこれを信念の危機と呼んでいる。これはスキルギャップではない。自己のギャップであり、AIはまもなく、それを隠し通せないものにする。

「自己編集の危機」はどこから始まるのか

私が夜も眠れないほど懸念しているのは、うまく立ち回ることを覚えたエグゼクティブのことではない。今まさにそれを学んでいる最中にあるティーンエイジャーたちのことだ。

コモン・センス・メディアの2025年の調査によると、10代の約72%がAIコンパニオンを利用したことがあり、利用経験のあるティーンの3人に1人が、深刻な相談をする相手として生身の人間よりもAIを好むと回答している。アイデンティティが形成される極めて重要な発達段階にある若者たちが、自分を否定せず、自分に失望せず、昨日自分が口にした言葉に責任を問うこともない存在との関係を、自ら選ぶようになっているのだ。

米国疾病予防管理センター(CDC)の「青少年リスク行動調査」によると、高校生の約40%が持続的な悲しみや絶望感を訴えている。また、ピュー・リサーチ・センターの2025年のデータでは、深刻な問題を抱えたときに親に相談すると答えたティーンはわずか52%だったのに対し、親の80%は子どもが相談しに来ると思い込んでいる。この乖離は、コミュニケーション不足の問題ではない。長年にわたり、周囲の期待に応えようと自分を演じ続けてきたことから生じた、信頼関係の欠如が原因だ。

シチズンズとジュニア・アチーブメントによる2025年の調査によると、10代の88%が、自分自身の道ではなく、あらかじめ用意されたレールに従わなければならないというプレッシャーを感じている。さらに、現在10代の48%が、SNSは同世代にとって「大半が有害である」と回答しており、この割合はわずか3年間で16ポイントも上昇している。

私はこれを「自己編集の危機」と呼んでいる。これは「信念の危機」に至る前段階の現象だ。10代の若者たちは、アルゴリズムや大学の進学実績、あるいは夕食の席で親に褒められるような会話に合わせて、本当の自分を「編集」することを学習する。そして彼らは学校を卒業し、あなたの会社に入社する。その結果、なぜ会議で誰も反論しないのだろうとあなたが不思議に思うことになるのだ。

「信念の危機」と「自己編集の危機」は、決して別々の問題ではない。人生の異なる2つの段階において現れる同一の傷跡であり、特に今の時代において、私たちはその高い代償を支払わされている。

ザッカーバーグの正しさと誤り

ザッカーバーグが描く超知能のビジョンは、冷笑的なものではない。優秀なAIアドバイザーへのアクセスを民主化することが、人々の生活を向上させると彼は本気で信じているのだろう。そして、限定的かつ実用的な観点から言えば、それは正しいかもしれない。

しかし、彼のフレームワークが見落としているのは、アドバイザー(それが人間であれ人工知能であれ)の価値は、アドバイスを受ける本人がどれほど明確な意思を持っているかによって決まるという点だ。自分が本当は何を信じているのか分かっていなければ、優秀なAIは、あなたがすでに演じている仮面(パフォーマンス)を肯定するだけにすぎない。AIは仮面を最適化するだけで、その下にある素顔を救ってはくれない。

カリプソAIが2025年に実施した調査によると、従業員の45%がすでに、一緒に働く同僚よりもAIを信頼しており、エグゼクティブの半数は人よりもAIに対して報告することを好むという。私はこの記事を読んだとき、「解放」ではなく、「信念の危機」が完璧な隠れ家を見つけたのだと感じた。

膨大なデータに基づく自信に満ちた口調で、あなたが聞きたい言葉だけを返してくれるAIコンパニオンは、知性ではない。それは、大規模にシステム化された高度な「承認欲求の追求」にすぎない。

データでは埋められない「繁栄のギャップ」

ギャラップとウォルトン・ファミリー財団の2025年調査は、両者が「繁栄のギャップ」と呼ぶものを記録している。Z世代の学生の56%が自分はうまくやれていると回答する一方、その割合は若年成人では39%に低下する。言い換えれば、若者が労働市場に入り、大人としてのパフォーマンス期待の世界に足を踏み入れた瞬間に、何か本質的なものが失われるのだ。

エデルマンの2026年データでは、より良い未来を期待している人は32%にとどまる。これは悲観主義ではない。存在感より成果を、主体性よりアウトプットを、信念より合意を体系的に報いてきた文化が導く、当然の結論である。

AIが人間の「意志」を問い直す契機になるというブルックスの指摘は正しい。しかし、その問い直しは、企業の役員室から始まるのではない。家庭の食卓で、あるいは学校のスクールカウンセラーの部屋から始まるのだ。10代の若者が、親にはどうしても言えないことをAIコンパニオンに打ち明けることを選ぶたびに、そしてエグゼクティブが、生き残るためには「自分を編集する(押し殺す)」必要があることをずっと以前に学んでしまったがために会議で沈黙を守るたびに、その問い直しは静かに進行している。

なお注意を払い続けるリーダーに求められる3つの必須事項

この記事を読んでいるリーダーたちは、次に何が起きるかについて、データセンターで訓練されているどのモデルよりも大きな影響力を持っている。いまこの瞬間が求めているのは、次のことだ。

1. アウトプットの測定をやめる。オーサーシップを測定し始める。
問うべきは、あなたの部下が何を生み出すかではない。それはAIがますます担うようになる。問うべきは、チームのメンバーが自分のアイデアの真正な作者であるのか、それともあなたが聞きたいと思っていることを巧みに編集しているだけなのかである。その違いが見分けられないのだとすれば、それは彼らの失敗ではない。あなたの失敗である。

2. 反対意見を構造的に安全にする。
組織の中で異議を唱えるのが、それでも生き残れるだけの政治的資本を持つ人だけだとしたら、そこにイノベーションの文化はない。あるのは、管理されたパフォーマンスの文化である。反対意見は機能不全ではない。それは、誰かのアイデンティティがまだ無傷であることを示すシグナルだ。競争優位の資産として、それを守るべきである。

3. 最も重大な会話は、我が家の食卓から始まる。
「自己編集の危機」は45歳から始まるのではない。15歳から始まっているのだ。親でもある上級リーダーたちは、検証すらしたことのないやり方で、子どもたちに「演技をする文化」を無意識に伝えている。誠実さを保ちつつ際立つことよりも、周囲に「同調する」ことで子どもを褒めるとき、あなたは現役生活を通じて必死に正そうとしてきたまさにその行動(自己抑制)を、次世代のマネージャーたちに叩き込んでいることになる。

本当の分断

長年にわたり何千人ものリーダーたちと仕事をしてきたが、例外なく、混乱の時代を最も効果的に乗り越えていくリーダーとは、技術的な適応力が最も高い人たちではない。彼らは、誰も見ていないときに「自分が何者であるか」を、確固たる自信とともに理解している人々である。

これこそが、AIが明らかにする本当の分断だ。「知性か無知か」でもなく、「早期導入者か遅れをとる者か」でもない。それは、編集されていないありのままのアイデンティティを保ち続けている人々と、外部の承認を得るために自分を演じ続けた結果、自分の本当の声と、そうするように訓練された声との区別すらつかなくなってしまった人々との間の分断である。

この記事を読んでいるすべての経営幹部に私が問いかけたいのは、「AIに対する準備はできていますか?」ということではない。「あなたはいまだに『あなた』ですか?」という問いだ。

forbes.com 原文

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