過去5年間で仕事はますますオフィス以外の場所で行われるようになり、最近では同僚との直接的なやり取りも少なくなっている。人工知能(AI)がメモを作成し、会議を要約する。そして、以前なら同僚が答えていた質問にもAIが回答する現代だ。リモートワークによって対面で人と接する機会が少なくなる中、人々がこれまで以上に対面での交流を必要とし、企業向けのリトリートのビジネスは拡大していることが調査で示されている。
リモートワーカーは職場でこれまでになく強い孤独を経験しており、調査では27%が孤立感を抱いていると回答している。特に若い従業員に顕著で、Z世代の労働者の20%が頻繁に孤独を感じているという。この割合はミレニアル世代のおよそ2倍だ。さらに、個人的なサポートやキャリアに関するアドバイス、感情面での肯定を求めてAIチャットボットを利用する従業員も増えている。米経営学誌ハーバード・ビジネス・レビューも職場における孤独感に関する調査の中でこの傾向を取り上げている。
こうした事態を受けて企業は出張予算を見直している。Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、2024年に318億ドル(約5兆円)規模だった企業のリトリート市場は2034年までに737億ドル(約11兆円)に成長すると予想されている。この成長はAIやビデオ通話では得られないメリットが対面で一緒に時間を過ごすことにあることを示している。企業の出張手配の担当者たちは、関係構築のための活動が従来の娯楽や記念品よりもこうしたリトリートにおいて最も価値のある要素になりつつあると指摘している。
こうした支出を後押ししている要因の1つが自動化することが難しくなっているスキルの存在だ。コラボレーション、信頼関係の構築、場の空気を読むといった能力は経営幹部がAIでは得られないと最も頻繁に挙げるものであり、これらは画面越しには習得が最も難しいものでもある。リトリートはこうした能力を鍛えるための数少ない場の1つだ。
一流ホテルの視点
企業の団体を受け入れている宿泊施設はこの変化を直に見ており、その見解は調査結果とも一致している。
米オクラホマ州オクラホマシティ中心部にあるホテルThe National, Autograph Collection Downtown OKC(ザ・ナショナル・オートグラフ・コレクション・ダウンタウンOKC)のゼネラルマネジャー、パトリック・ドハーティがインタビューで語ったところによると、企業の団体客は会議室と外部会場を行き来するのではなく、滞在中ずっと一箇所に集まって過ごすことを望む傾向が強まっているという。広さが約660平方メートルある同ホテルの「ナショナル・ボールルーム」では大規模なセッションが行われ、それより狭い部屋では分科会が開催される。その後、グループは「ザ・ヴォルト」でのカクテル教室、「ストック&ボンド」でのウイスキー試飲、「ザ・グレート・ホール」でのアフタヌーンティーへと移動する。また、ホテルはダウンタウンに位置しているため、オクラホマシティの複数の公園や博物館、文化施設に徒歩で行くことができ、車を使わずに会議室外でもグループで一緒に時間を過ごせる。「これにより、チームは生産性を高めるために必要な仕組みを得られると同時に、自然な形で人とつながり、オクラホマシティを体験し、オフィスとは明らかに異なる雰囲気の中で過ごす機会が生まれる」とドハーティは話した。さらに、同ホテルの営業チームは画一的な会議パッケージをそのまま提供するのではなく、各団体が掲げる目標に合わせて旅程を組み立てているという。



