減速フライバイとは、公転する天体の重力圏を、公転とは逆方向に宇宙機が通り抜けることで機速を落とす航法のこと。宇宙機にマイナスの重力が働いて引き戻される結果として機速が落ちる。ベピコロンボの場合は、打ち上げから8年の間に地球フライバイを1回(2020年)、金星フライバイを2回(2020・2021年)、水星フライバイを6回(2021年10月から2025年1月)にわたって行い、9月3日時点では太陽を周回しながら水星と伴走する状態にある。
輸送モジュール「MTM」をすでに分離した「MPO」と「みお」は、11月21日に結合した状態でそのまま水星の極軌道に捕捉され、12月9日ごろには「MPO」から「みお」を分離し、楕円極軌道にリリースする。その後、12月16日に「MPO」はサンシールド(MOSIF)も放出し、スラスタ(姿勢制御装置)を使用して目標軌道まで降下を開始。2027年3月10日には自らも目標軌道に入り、4月6日から観測を開始する予定だ。
このプロジェクトの名称であり、統合された機体の総称でもあるベピコロンボ(Bepi Colombo)とは、イタリアの天体力学者であるジュゼッペ“ベピ”コロンボに由来する。彼はフライバイ航法の有用性をはじめて提唱した人物であると同時に、史上初めて水星への到達・フライバイに成功したNASAの探査機「マリナー10号」(1973年打上げ)の軌道設計者でもある。
同じ軌道面、違う軌道から観測
欧州の「MPO」と日本の「みお」は、どちらも水星を南北方向に周回する極軌道に投入される。その軌道面は同じであり、軌道傾斜角は90度だ。ただし、「MPO」は480km(近点)から1500km(遠点)の楕円軌道を約2.3時間で周回し、「みお」は590kmから1万1640kmの楕円軌道を約9.3時間の周期で回る。つまり、「みお」が水星を1周する間に、MPOはちょうど水星を4周することになり、理想的な連携観測が可能となる。
こうした軌道を航行しながら、「MPO」は低高度から水星の地形や鉱物、重力場などをスキャンする。一方の「みお」は細長い長楕円軌道を航行しながら、主に水星の磁気圏を広範囲に調べるとともに、太陽から吹き付ける太陽風の影響などを立体的に観測する。こうした2機による同時観測によって、水星の内部で何が起きているかをこれまでより精密に調査する。


