影響力によってリーダーシップを発揮するには、真実と、自分自身に関するその真実に耳を傾ける勇気が必要だ。CEOの椅子に座ったことで、私はこれまでのどの役職よりも、影響力について深く考えざるを得なくなった。
地位が高くなればなるほど、権限だけでは前に進めなくなり、誰も見ていないところで自分が築き上げてきたものに頼らざるを得なくなる。
「権限」と「影響力」の違い
私が影響力について最初に学んだのは、キャリアの初期、メンターからの教えだった。「声の大きさは、存在感ではない」。声を荒らげることは、伝えようとしていることの価値を下げる。なぜなら、声の大きさは、そのアイデアが単独では成り立たないことを示すからだ。その瞬間、私はその場で最も影響力のある人物が、決して最も大きな声を出す人ではないことに気づいた。その人物とは、意思決定が下される前に、全員が思わず視線を送るような存在だ。多くの場合、静けさは「確信」と捉えられ、人々は確信に従う。最も大きな声がその瞬間を支配するのだとすれば、最も冷静な佇まいが結果を支配するのだ。
影響力とは、これまでに重ねてきたあらゆる対話の「残響」である。会議で自分のアイデアが、自分の功績としてではなく、別の人によって語られるのを耳にしたことはないだろうか。影響力のあるリーダーは、それを侮辱とは受け取らない。自分の考えが浸透し、自分がいなくても独り歩きし始めた証拠だと捉えるのだ。
私たちはよく、「権限」と「影響力」という2つの言葉を混同してしまう。権限とは、肩書であり、地位であり、予算である。それはあなたがその場にいることを必要とし、自ら勝ち取るものというよりは、一時的に与えられる(借りる)ものであることが多く、服従を強いるものであり、その部屋のドアを出れば効力を失う。一方で影響力は、組織全体に作用する。それはあなたがその部屋にいなくても入り込み、毎日家賃の支払期限がやってくる借り物であり、協調を促し、複利のように増大していく。どちらもリーダーシップの一部だが、キャリアを通じて権限ばかりを集め、なぜ自分が築いたものが自分より長く残らないのかと首を傾げるようなことになってはならない。
自分の影響力によって形作られる意思決定の場に、自分が同席することはほとんどない。だからこそ、決定そのものではなく、意思決定をする「人」に働きかけるのだ。1人の考え方を変えれば、自分が決して同席することのない部屋で、その人がその後に行うすべての決断を変えることができる。これは時間のかかる作業であり、それが実際に起こる瞬間を目にすることはめったにない。影響力とは、本質的に静かで、時間をかけて現れるものなのだ。
では、どのようにして影響力を築くのだろうか。
リーダーとして影響力を高める方法
私は、影響力とは生まれ持った性格ではなく、習慣によって築かれるものだと信じている。私が影響力を築き、維持し、育む上で役立った6つの重点分野を紹介する。
役に立つ存在になる。 人のために行動することは、巡り巡って自分自身のためになる。どんな問題であっても、同じ熱量で協力することだ。助け合いは信頼を築き、信頼は影響力を築く。
一貫性を持つ。 リーダーとしてのあなたの反応は、その原因となった出来事そのものよりも大きな影響を与える。プレッシャーの下でも、感情的な振る舞いが予測可能(一定)であるように心がけることだ。
人を育てる。 周囲の人々の成長によって成功を推し量る。手柄は他人に譲り、自分のスキルを活かしたいと願う才能ある人材の育成を支援することだ。
人と物事をつなぐ存在になる。 影響力は、動き続けているときに最も価値を発揮する。情報を独占してはならない。問題と解決策を結ぶ最短の経路になることだ。
フィードバックをオープンに求める。 耳が痛いかもしれないが、身を滅ぼすようなことはない。まずは自分自身の痛いところを自ら進んで口にすること。そうすれば、周囲の人々も安心して本音を言えるようになる。
準備を怠らない。 影響力の大部分は、徹底的な準備とその場しのぎの対応との「差」に宿る。資料を読み込み、質問をし、スライドの予行演習を行う。自分が真剣に取り組んでいる姿勢を周囲に示すことだ。
野心をもっと大きな何かに向けるべき理由
影響力はしばしば「野心」に端を発するが、野心という言葉には悪いイメージがつきまとう。しかし、野心そのものが問題なのではない。問題は、勝利の恩恵があなただけで止まってしまうときに生じる。もしあなただけが勝者となるなら、リーダーとしての影響力の賞味期限は短く、あなた自身のリーダーとしての寿命も同様に短くなるだろう。人々は一度はあなたが登るのを助けてくれるかもしれない。だが、登り終えた後にハシゴを外すような人物のために、二度と力を貸すことはない。あなたが勝ったとき、誰がその恩恵を受けるだろうか。
野心を蝕むのは「欠乏マインド」だと私は学んだ。全員に行き渡るだけの十分なリソース(富や評価)はないという思い込みは、影響力のある人物を、ため込み、隠し、他人の手柄を横取りする人物へと変えてしまう。一方で「充足マインド」は、野心を健全に保つ。全員に行き渡るだけの十分なものがあると信じていれば、寛大でありながらも勝ち残ることができるからだ。誰もいたがらないような部屋で、最後まで1人立っていたとしても、そこに表彰されるような価値はない。野心は、自分自身の名前よりも大きなもの、例えば数値、チーム、基準、あるいはミッションに向けよう。自分自身だけに向けられた野心には限界がある。しかし、より大きな何かに向けられた野心には限界がない。
まとめ
影響力を築くことは困難な道のりだ。そして、それを歪んだものにしないよう守り抜くことは、さらに困難である。紹介した6つの習慣は影響力を生み出す。しかし、それを守り続けるための要素は、私たちのより深い内面に宿っており、それは自信、謙虚さ、そして準備にかかっていると私は考えている。
・自信とは、その場で何が起ころうとも対処できるという確信であり、だからこそ状況を支配する必要がなくなるのだ。
・謙虚さとは、自分を卑下することではない。自分に非があるかもしれないということに、純粋な好奇心を持てるほど心に余裕があることだ。
・準備とは、敬意の一形態である。相手の時間が貴重であることを示し、自分の「不確実さ」を相手に押し付けないという意志の表れなのだ。
次のリーダーシップに関する決定を下す際、自分に問いかけてみてほしい。「自分がその場にいないとき、人々は自分の存在ゆえにどう動くだろうか」と。



