今年の10月、AIGは「成功するには大きすぎる」ことを理由に、同社の分割を呼びかける書簡を出したアイカーンだが、11月末には更に、AIGの役員を一名増やす計画を発表、その役員をハンコックに代わってCEOにする前提だとする書簡を出した。
ハンコックと複数回に渡り会談した結果、としてアイカーンはその書簡で「既に遅きに失している上に、ハンコック氏には我々、そして多くの株主が求めている大胆な手を打つ意思がないことが明確になりました」とした。
アイカーンは、来春行われるAIGの年次総会を待たずに「役員会から要請されればハンコック氏に代わってCEOに就任する意思のある」役員を追加することについて、同意要請を開始しようと考えている。
同じく富豪投資家ジョン・ポールソンのヘッジファンドの支援も受けるアイカーンの当初の提案は、AIGを3つの独立した会社へ分割する、というものである。そうすることで「システム上重要な金融機関」という指定を受けなくなり、結果として資本負担や規制の影響を軽減することがねらいだ。
アイカーンの書簡を受けてAIGは「発表済の戦略遂行を更に加速して進めるべく新たな取り組みを行う予定である」と発表、2月上旬の第4四半期損益発表前に経過報告を行うことも約束した。
しかし、11月3日に発表されたAIGの第3四半期決算は、会社の分割を食い止めるには何とも説得力に欠くものであった。収入はアナリストによるコンセンサス予想のなんとか半分程度に達する程度にとどまり、多くのアナリストや投資家からも事業合理化を求める声が上がった。
書簡でアイカーンはAIG株を4,200万株保有していると発表したが、つまりAIGの5番目の大株主に躍り出たことになる。一方、9月30日の時点で1460万株保有するポールソンは14番目である。
アイカーンとポールソンから圧力のかかり、ハンコックが新戦略を打ち出すまでのタイムリミットが大幅に短くなったことは確かだ。これは他の物言わぬ株主たちにとっても歓迎される展開だろう。
「我々はかねてよりAIGにはかなりの潜在価値があると見てきました」。資産運用会社バーンスタイン・アライアンスの保険担当シニアアナリストのジョシュ・スターリングは、アイカーンが書簡を送った日に、顧客向けのメモにこう書いた。「経営陣をバリュー重視の戦略へと動かすアクティビスト(物言う株主)の登場で、AIG株が本領を発揮する時がきました。株価を上昇に導く魅力的な短期的要因があると考えます」
尚、AIG株は、書簡の送られた日の朝0.5%上昇、2015年に入ってからは12%上昇している。