映画『フェイブルマンズ』で、スティーブン・スピルバーグ監督は、自身の幼少期における初期の監督体験の一部を銀幕に刻んだ。後に3度のオスカー受賞者となる人物が、8mmカメラを使って映画を作ろうとする少年時代の姿を描いている。当時の彼はまだプロの監督ではなかったが、まさに監督のように振る舞っていた。
ビジネスの世界では、マネジャーやリーダーの役職に昇進するまで、自分の仕事の主導権を握るのを待ちがちである。だが、そうである必要はない。新任インターンであれ、キャリアを何年も積んだ人であれ、どの立場にいても、リーダーのように振る舞い始めるのに早すぎることはない。スピルバーグの物語が示すように、それはこの先の道に備えるための大きな弾みになり得る。
筆者は自社のCEOとして、リーダーはそうした野心に必ず気づくと断言できる。どの立場にいる人でも、今日からリーダーのように振る舞い始める方法は次の通りである。
誰も見ていない場所に目を向ける
極めて有能なリーダーを特徴づける資質の1つは、現状を改善する方法を常に探していることだ。物事が順調に進んでいるときは、現状に満足し、既定路線を進み続けたくなる。だが、新たなAIツールや機能が次々と登場する今日の絶えず変化するビジネス環境で生き残るために不可欠な継続的成長には、物事をさらにうまく回す方法を主体的に考える姿勢が求められる。
このマインドセットに必要な特性は、好奇心である。
優れたリーダーは、システムや業務をより効率的にする方法に好奇心を持つ。なくせる重複した手順を探し、新たな自動化の方法を見つけようとする。Harvard Business Reviewが指摘するように、リーダーシップ行動とは、ホワイトスペース、すなわち「他の人が取り組みたがらない、あるいは存在すら知らない問題」を探すことを意味する。見て見ぬふりをするのではなく、口にされていない問題に取り組むことは、組織内で評価を得る確実な方法である。
リーダーとして言えるのは、こうしたアイデアが従業員から出てくることを、私たちは歓迎するということだ。好奇心を育み、物事をより良く進める方法がないかを検討することは、どんな従業員でも今日から始められる。
誰もがチームに迎えたい人になる
「上げ潮はすべての船を持ち上げる」と言われる。リーダーを目指すプロフェッショナルにとって、この言葉が当てはまる理由はいくつもある。
まず、同僚であれ、若手社員であれ、他部門の仲間であれ、他者をメンタリングし、教えることは計り知れない恩恵をもたらす。概念を深く考え、アイデアを明確に表現する方法や、タスクを効率的に完了する方法を見出すことによって、対象への理解が深まるからだ。筆者は自分の仕事のやり方を知っていたが、育児休暇を取得し、多くの責任を委任しなければならなくなったとき、自分がしていることすべてについて専門家になった。教えることはコミュニケーション能力を磨く。単なる実行者から、問題解決者へとマインドセットを変える。また、全員の能力を高めることで、組織全体を底上げする。
さらに、Harvard Business Reviewが強調するように、リーダーが昇進を独断で決めることはめったにない。筆者もそうしない。昇進の評価を受ける際、上司は「あなたの能力を評価するために他者を頼る。つまり、組織全体に支援者、すなわちあなたがしている仕事を知る人々が必要になる」。
周囲が助けを求める相手であり、自分のスキルとプロ意識を確立している人であれば、同僚から高い評価が寄せられる可能性は高まる。
与えられた仕事だけでなく、成果に責任を持つ
AIの時代において、従業員が自らの担当タスクに対して当事者意識(オーナーシップ)を持つことは、かつてないほど価値が高まっている。
具体的にはどういうことか。
タスクが最初から最後まで適切に完了するようにすることだ。自動化ツールに任せる場合でも、若手社員に委任する場合でも、その仕事が組織の基準を満たしているかを確認するチェックポイントを設ける。例えば、リサーチにChatGPTを利用するなら、リンクをクリックし、すべての出典が信頼でき、自分の結論を裏づけていることを確認する。最終承認のコントロールは手放さない。プロジェクトが遅れているなら、誰かが前に進めてくれるのを待つのではなく、問題解決に主体的に取り組む。締め切りが変わる場合は、関係者とコミュニケーションを取る。プロジェクトが期待通りに進まないことは時に避けられないが、その場合は何がうまくいかなかったのかを見極め、学びの機会を特定し、それを共有する。特に若い世代の従業員にとって有用だと筆者が感じているのは、タスクや手順をより速く、あるいはより良く達成できるツールやアプリを知っているなら、そのアイデアを上司に積極的に伝えることだ。
従業員が自分の仕事にコミットし、責任を持っているとわかれば、上司の仕事も楽になり、日々抱く不安も和らぐ。
野心的な人が陥りがちなキャリア上の過ち
野心は非常に貴重である。最低限の仕事だけで済ませるのではなく、期待を超えて取り組むことは、組織の助けになるだけでなく、自分の仕事に対する当事者意識を生む。エンゲージメントを高めるのだ。
とはいえ、キャリアの未来への大志によって、現在の仕事がおろそかになってはならない。
「どれほど大きな野心を持っていても、それによって現在の役割で卓越することから気をそらされてはならない。未来と同じくらい、あるいはそれ以上に、現在に集中しなさい」とHarvard Business Reviewは指摘する。
仕事量が増えたら、しばらくリーダーシップ発揮の取り組みを抑え、現在の役割を果たすことに集中してよい。
私たちを取り巻く世界と同じように、企業も静的な存在ではない。ワークフローは季節や外部環境の変化に応じて増減する。1日、あるいは1週間、自分の範囲を縮小しなければならないとしても、リーダーシップの可能性を示す機会はまた明日訪れる。



