イタリア国防省の顧問に就任したウクライナのミハイロ・フェドロウ前国防相は8月18日、米動画投稿サイト「ユーチューブ」で、ウクライナ政府内の汚職を非難する動画を配信した。
同顧問は、汚職に手を染めている政府高官を名指しすることはなかったものの、ロシアによる侵攻が続く中、こうした不正がウクライナの防衛を妨げていると指摘した。その上で、ウクライナは「統治上の構造的な危機」に直面していると警告。この問題に対処するため、同国は選挙を実施すべきだと訴えた。「民主主義はロシアの人質にされてはならない。戦争が長期に及んでいようと、ウクライナが完全に民主的な手続きを再開できる、合法的かつ安全で現実的な仕組みを見出さなければならない」
ウクライナに選挙の実施を呼びかけているのは、フェドロウ顧問だけではない。米国のイーロン・マスク大統領上級顧問(当時)は昨年、X(旧ツイッター)で、ウクライナは選挙を実施すべきだとコメントした。ドナルド・トランプ米大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を「選挙の実施を拒否する『独裁者』だ」と非難した。さらに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、ウクライナは戒厳令を解除して選挙を実施する必要があると指摘した。同大統領はゼレンスキー大統領が再選される見込みはないとみている。
こうした一連の批判的な発言に対し、ゼレンスキー大統領は8月23日、ロシアによる侵攻が続く中での選挙実施は「甚大なリスク」になると反論。選挙は「ウクライナを分断する津波」となり、「国を破壊する」ことになると指摘した。
このような感情を抱いているのはゼレンスキー大統領だけではない。ウクライナのキーウ国際社会学研究所が7~8月にかけて国内で実施した世論調査では、国民の57%が、選挙は「最終的な和平合意が成立し、戦争が完全に終結した後」で実施されるべきだと考えていた。同調査では、ウクライナ国民の55%がゼレンスキー大統領を支持していることも明らかになった。
ウクライナは2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以来、戒厳令下にある。戒厳令はゼレンスキー大統領と国会に当たる最高会議によって延長されてきた。同国では、憲法によって戒厳令下での選挙が禁じられている。1996年6月28日に採択されたウクライナ憲法第83条第4項は、「戒厳令または非常事態宣言が発令されている期間中にウクライナ最高会議の任期が満了した場合、その権限は戒厳令または非常事態宣言の解除後に選出された最高会議の最初の会期の初会合の日まで延長される」と定めている。仏東部ストラスブールを拠点とする人権機関、欧州評議会も、戒厳令下のウクライナでは選挙を実施することはできないとの見解を示している。



