※この記事は2014年12月発行の米誌「Forbes」に掲載されたものです。
新興運用会社「アーク・インベストメント・マネジメント(Ark Investment Management)」の創業者兼CEOであるキャシー・ウッドは、毎週ニューヨークのオフィスで、銘柄選定を担当する6人のアナリスト(20代の若手5人と、50代の元映像制作者1人)を集め、ブレインストーミングを行っている。
自由闊達な議論のテーマは、テスラ、ネットフリックス、アテナヘルス、オートデスク、イルミナ、セールスフォース・ドットコムといった保有銘柄に及ぶ。その途中、ウッド特有の思い切った予測が飛び出す。「オラクルはもう終わりだと思う。本気でね」と、あるミーティングで彼女は言い放った。
2時間に及ぶこのミーティングで、一行は会議室に陣取る。普段はオープンワークスペースに並んだスタンドデスクを共有し、59歳のウッドもその中心に立ったまま仕事をしている。だから、これは例外的な光景だ。だが、決して閉ざされた秘密会議ではない。
ある週には地元のテクノロジー企業の幹部がふらりと立ち寄ることもあれば、別の週には工学系の大学教授が電話で参加したりする。実際に現れた者はまだいないものの、ライバル関係にある資産運用会社の参加すら歓迎しているという。ウッドが自身の選定銘柄を隠せないのは、最初から隠すつもりなどないからだ。
今秋、アーク社は特定のテーマに基づいて構築された4つのアクティブ運用型上場投資信託(アクティブ型ETF)を立ち上げた。インダストリアル・イノベーション(ARKQ)、ウェブX.0(ARKW)、ゲノミック・レボリューション(ARKG)、そしてイノベーション(ARKK)である。一般的なETFと同様、アークのファンドも従来の投資信託のように四半期ごとではなく、毎日保有銘柄を開示しなければならない。
世界最大の資産運用会社ブラックロックが、日々の開示義務を免除されたアクティブ型ETFの運用について米国証券取引委員会(SEC)に承認を求め、却下された一方で、ウッドは喜んで保有銘柄を公開している。実際、誰でも登録すれば、各ファンドで彼女が売買を行うたび(通常は各ファンド週に数回)に電子メールで通知を受け取ることができる。
「手の内を明かす」異端のETF戦略
運用資産わずか2600万ドルの小さなスタートアップが「話題作り」を狙った巧妙な手口なのだろうか? 確かにその側面もあるが、ウッドがこの選択をした背景には確かな理由がある。ETFは特に小規模な運用会社にとって運用コストが安い。モーニングスターの調査によると、一般的なオープンエンド型アクティブファンドの平均信託報酬率が1.24%であるのに対し、アークのファンドは年0.95%に抑えられている。
さらに重要なのは、ETFが従来の投資信託につきものだった税金面での足かせを回避できる点だ。従来の投資信託では、年間の実現純利益を保有者に分配しなければならず、課税口座(非課税の退職金口座以外の口座)でファンドを保有する投資家にとってこれは痛手となる(上昇相場の初期段階では、ファンドは金融危機の際の繰越損失を利用して実現益を相殺していたが、今年は多くのファンドが投資家に多額の課税対象分配金を支払うことになる見込みだ)。
ポートフォリオの回転率が高いアクティブ運用ファンドにとって、この課税対象となる利益は、インデックスファンド以上に深刻な問題となる。したがって、アクティブファンドにとってETFの節税メリットはさらに大きくなり得る。それにもかかわらず、1兆9000億ドルに上るETF投資残高のうち、アクティブ運用が占める割合は1%未満に過ぎず、そのアクティブ型の大部分もピムコ(PIMCO)の債券ファンドに集中している。
巨大企業のブラックロックは、日々の開示によって他のトレーダーに自社の買い注文を先回りされることを恐れているのかもしれない。しかし、弱小企業であるアークにとって、情報開示は欠陥ではなく、むしろ望ましい仕様なのだ。「同じ側に立って取引してくれる仲間が加わってくれるのは大歓迎です」とウッドは語る。情報の透明性こそが、時に物議を醸す自身の選定銘柄に注目を集め、若年層の投資家を引き付ける手段になると彼女は捉えている。



