一方で、建築家としてのキャリアも大切に積み重ねている。在学中から自身の事務所「Studio Yukasa Narisada」を設立し、展覧会の内装設計、空間のリノベーションなどを手がける。建築を撮るようにファッションを撮るというような撮影の依頼もある。
「声をかけてもらった仕事を、どんなチームで進めていこうかと考えることが楽しいです。私にできない部分や、実現までの道のりにどんな人の力が必要か考えながら、いろんなかたちでいろんな人と共同作業したいし、何でもやってみたい」
傍ら、同世代の建築家と出版プロジェクト「Tabula Press」も続けている。ある展覧会で「順路に沿って見ていくのが本みたいだ」と気づいたのが原体験となり、自らが行った展示は必ず本にまとめるという。大学院で師事した建築家から、「最終的な建築家の仕事は、設計図書、つまり書籍を作ること」と教わったことも大きいという。
建築家には、例えば20代で住宅を手がけ、30代で公共施設を経験し……と年齢で区切って目標を立てる人も少なくない。しかし成定は「大きな建築ができなくても、たくさんの建築を立てなくても、そうではない建築との関わり方を考え続けることを目標にしたい」と話す。それは建築家と現代美術家、ふたつの道を行き来しながら進もうとしているからこそ、だろう。
「建築って、課題や依頼をどう解決していくか、その全体性を説明する仕事の側面が大きい。だから美術作品においても全て説明しようとしてしまいますが、以前『(鑑賞者にも、創作にも)もうちょっと委ねて、わからないことにも期待してみては?』とアドバイスいただいたこともあって。自分の言葉で書いて伝えること自体は好きですが、この先はもっと「アートってなんだろう」を掘り下げていく時期かな、と考えています」
目下、多様な依頼に応えていけるよう、一級建築士の資格取得を目指しつつ、自らの創作と表現を深めるために美術史も学んでいる。
「建築とアートのどちらかに、とは今のところ考えていませんし、そもそも決めるのは難しい。自分が建築とアートの間にいる意味や理由を見つけられたらいいな、と考えています」と成定。建築もアートも、巡ってくるチャンスを実績へと変えながら、自身の価値を見いだそうとしている。
なりさだ・ゆかさ◎建築家、現代美術家、Studio Yukasa Narisada 代表。1998 年生まれ。2024 年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。建築を主軸に横断的な作品を発表。主な展示に「Groundzero」(京都芸術センター、2023 年)、「Over My Head」(CALM & PUNK GALLERY、25 年)など。


