マルクス・アウレリウスは、西暦161年から180年までローマを統治した。現在『自省録』として知られる彼の私的な手記は、読者のために書かれたものでは決してなかった。自分自身への戒めとして記されたものである。その最後の章である第12巻で、彼は次のように書いている。
「私にとって常に驚きでならないのは、私たちはみな、他人よりも自分自身のことを愛しているにもかかわらず、自分自身の意見よりも他人の意見を気にかけているということだ」
実質的に無限の民衆の支持を得ていたマルクス・アウレリウスが、この事実をこれほど明確に見抜いていたというのは、実に示唆に富んでいる。
彼はさらにこう続ける。「もし賢者があなたに対し、考えを隠すことや、心に浮かんだことをすぐに大声で叫ばずに想像することを禁じたとしたら、あなたは一日ももたないだろう」。彼が指摘しているのは、私たちは言葉を発する前に、常に自分の考えを監視し、他人がどう反応するかに基づいてフィルターをかけているということだ。私たちはこのことを常に自覚しておく必要がある。なぜなら、このように自分の考えにフィルターをかけることは、意思決定に(良くも悪くも)影響を与えるからだ。
なぜこれが「心の知能指数(EQ)」に関わる問題なのか
感情指数(EQ:心の知能指数)とは、人間関係や目標達成、仕事においてより高いパフォーマンスを発揮するために、自分自身と他人の感情を認識し、理解し、コントロールする能力のことだ。EQは以下の4つのコアスキルで構成されている。
- 自己認識(Self-Awareness):自分の感情を認識し、理解する能力
- 自己管理(Self-Management):自分の感情に対処し、コントロールする能力
- 社会的認識(Social Awareness):他人の感情を認識して理解し、他人に共感する能力
- 人間関係管理(Relationship Management):前述のスキルを総動員して、他者との関係を構築、維持、発展させる能力
自分のEQを評価するには、心理学的に妥当性が確認されたEQアセスメントを受けることを専門家は推奨している。
この名言の中で、アウレリウスは「自己認識」における葛藤について述べている。自己認識の大部分を占めるのは、自分の価値観や信念を知ることだ。なぜなら、自分の行動を価値観や信念と一致させられるかどうかが、感情に直接影響を与えるからである。例えば、自分の価値観に反する決定を下したとき(売り上げを立てるために倫理的にグレーな行為をするなど)、心の中に負の感情が湧き起こる。逆に、自分の価値観を貫いたとき(倫理的なグレーゾーンに踏み込むことを拒み、案件を断るなど)は、たとえその瞬間には実感しにくくとも、最終的にはポジティブな感情を得ることができる。
自分の本心と食い違う決定を下してしまう原因の多くは、周囲の人々(上司、見込み客、憧れの人など)を喜ばせなければならないというプレッシャーによるものだ。
研究が証明する真実:「他人に合わせる」のは時間と労力の無駄
心理学者のトーマス・ギロビッチ、ビクトリア・ハステッド・メドベック、ケネス・サヴィツキーは「スポットライト効果」という言葉を提唱した。これは、私たちが「他人が自分や自分の行動をどれほど気にしているか」を大幅に過大評価してしまう傾向を指す。私たちは自分にスポットライトが当たっていると思い込んでいるが、現実には、他人は自分自身のことで頭がいっぱいなのだ。
ある研究では、グループディスカッションの参加者たちが、自分の「最も優れた発言」と「最も的外れな発言」が同席したメンバーにどれほど強い印象を与えたかを過大評価していた。現実には、大半の人は、本人が思っているほど他人の行動を深く心に留めてはいない。
さらに悪いことに、エリカ・ブースビーらの研究チームは、会話の後に私たちは一貫して「相手が自分に抱いた好感度」を過小評価していることを突き止めた。ブースビーは、この現象の一因として、私たちが自分自身の振る舞いに対して極めて厳しい評価を下してしまうことが関係しているのではないかと推測している。
アウレリウスが約2000年前にこのことを指摘していたが、現代の研究も彼の主張を裏付けている。私たちは「他人にどう見られているか」にひどく苦悩するが、他人は私たちが思っているほど自分に関心を払っておらず、また厳しく評価してもいない。あなたを最も厳しく批判しているのは、ほぼ常に「あなた自身」なのだ。
この名言を実践に生かすには
次に、周囲の人を喜ばせるために決断しそうになったら、一度立ち止まり、その決断が自分の価値観とどう一致しているかを自問してほしい。一致していないなら、ペースを落とし、新たな進み方を考えてみる。一致しているなら、自分は正しいことをしているのだと理解したうえで前に進めばよい。
これが徐々にうまくできるようになると、興味深い変化が起こり始める。自分の価値観に従って行動すればするほど、他人にとってあなたはより「自分に正直で、魅力的な人物」として映るようになる。そして結果的に、常に他人に合わせようとしていた頃よりも、人はあなたをいっそう好むようになるのだ。
ケビン・クルーズ(Kevin Kruse)は、EQトレーニング企業LEADxの創業者兼CEO。また、『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラー作家でもある。心理学的に妥当性が確認され、4つのコアスキルごとにスコアが細分化される無料のEQアセスメントはこちらから受けることができる。



