NASAが、火星と地球を結ぶ次世代通信網「火星通信ネットワーク」を開発する相手に、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスが率いるブルーオリジンを選んだ。米国時間9月1日に発表した契約の総額は、最大7億ドル(約1113億円)に上る。急速に伸びているブルーオリジンの宇宙機事業に、NASAは先行きを大きく左右する賭けに出た。火星通信ネットワークは、火星へ向かうNASAの探査計画に対し、途切れにくく大容量の通信サービスと、探査機の位置や進路を割り出す航法サービスを提供する。
NASAが火星通信網の整備を、ブルーオリジンに委ねる
今回の選定は、打ち上げの請負業者から、より広い宇宙インフラ企業へ変わろうとするブルーオリジンの動きを浮き彫りにする。ブルーオリジンが手がける事業は、ロケット、宇宙機、月着陸機、衛星通信へと広がってきた。2026年1月には、衛星通信網「テラウェーブ(TeraWave)」の構想を公表した。地球低軌道と中軌道に配置する5408機の衛星が、テラウェーブという通信網を支える。
あわせて、宇宙輸送機「ブルーリング(Blue Ring)」の開発も続けてきた。ブルーオリジンの説明によれば、必要な機能を1機に集約した高出力の機体で、太陽電気推進と化学推進を組み合わせて飛行する。
ブルーリングは機材を軌道間で運び、宇宙での計算処理も担う
ブルーリングは、最大4000キログラムの機材を積み、ある軌道から別の軌道へ運ぶために設計された機体である。輸送がもともとの役割だが、ブルーオリジンは、宇宙空間でデータを処理する機能や、顧客の機器を機体に載せたまま動かし続けるサービスの担い手としても、ブルーリングを売り込んできた。どちらの機能も、地球の外に通信網を築く際に必要となる設備と重なる。
NASAは契約の発表文で、火星通信ネットワークに使う宇宙機について、ブルーリングそのものを充てるとも、ブルーリングから直接派生した機体を充てるとも述べていない。それでも、ブルーオリジンがブルーリングという共通機体に資金を投じてきた事実は、打ち上げ会社という立場を越えようとする野心を映している。



