「3人寄れば文殊の知恵」という言葉は、普通の人間でも3人で考えれば、智慧を司る文殊菩薩様のようにいいアイデアが出ることを表す諺だが、今風に言えば多様性の恩恵だ。だが、本当にそうなのか。「船頭多くして……」という諺もある。そこで大阪大学は、答えが1つに決まらないあいまいな問題を考える実験で、それを検証した。
大阪大学とネブラスカ大学による研究グループは、あいまいな問題の答えにつながるアイデアを出すための思考を、個人または集団で行った場合にどう違うかを確かめる実験を行った。この実験には2つの要素が含まれている。1つは、あいまいな問題を考える前に、その問題をさまざまな角度から捉え直して明確な問いを生み出す「問題構築」の有用性を検証すること。もう1つは、個人または集団で考えたときの有用性の検証だ。
実験では、大学生175人に参加してもらい、「人々が歩きスマホをしている問題の状況」を描いたシナリオに対して、創造的な解決策を考えさせ、アイデアの数と種類を計測した。ここでは「創造的」を独創性と有用性を兼ね備えたアイデアと定義している。また「アイデアの数」は、個々のアイデアの総数、「種類」は、似たようなアイデアを同じカテゴリーに分類したときのカテゴリーの数(つまり多様性)とした。
被験者には、問題構築とアイデア出しを、個人または3人のグループ(集団)で実行させた。まずは問題構築だが、問題構築を行う条件では、歩きスマホのシナリオに対して、「どうしたら私/私たちは……できるか」という形で、できるだけ多様な視点から明確な問いを準備してからアイデアを出してもらった。一方、問題構築を行わない条件では、いきなりアイデアを考えてもらった。

その結果、アイデア数の平均値を問題構築の有無で比較したところ、個人は問題構築の有無にかかわらず同じだった。集団の場合は問題構築がなくても個人よりもアイデア数が多く、さらに問題構築を行った場合にはさらに多くなった。

アイデアの種類の平均値でも、アイデア数と同じ傾向が見られた。これまでも問題構築の重要性は指摘されていたものの、それを個人でやるか集団でやるかでどう違うかは明らかにされてこなかったが、この実験により、問題構築とアイデア出しを集団で行うことで、より創造的なアイデアが多く得られることが示された。立場や経歴の違う人が集まれば、もっと創造的なアイデアが生まれるだろう。多様性の大切さがよくわかる。



